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虚節イッター:記事を更新したいお年頃になってしまったようです
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 「さすがは「神産み」、数日でこれだけの兵が揃うとはな。」

 アリシュナは魔力を与えると同時に、イザナギに気付かれぬようイザナミを支配した。
魔力を手にしたイザナミは昼夜狂ったように異形の魔物を産み出し続ける。
産み出された魔物達は自ら増殖を始め、数日の間に数千の軍勢が出来上がった。
イザナギはその様子をただ黙って見ていることしかできなかった。

 アリシュナは野放しにしておけば何をするかわからない。
一向に帰ってこないモビリンに焦りを募らせていたルイだったが、
カグツチの飛ばした使いに「今日中に戻る」と返事が来たため、
ルイはモビリンの帰りを待たず、アリシュナへの奇襲を決断する。

 「間違いない、アリシュナはこの先にいるわ。」

 「本当に便利な鏡だな。」

 「あら?…アリシュナの隣にいるのは誰かしら…?」

 「これは…間違いない。我が母、イザナミだ!!」

 「やだ、ヤケに卑猥な格好ね。」

 「何をしているんだ?」

 「わからないけど…敵同士だったはずのアリシュナとイザナミが組んでるってことか…」

 「…なんだッ!?」

 漆黒の獣に似た異形がハイチに飛びかかった。ハイチはそれを避け、同時に一閃を放つ。
異形は真っ二つになり、その場に倒れた。

 「ルイ、これはどういうことだ?」

 「決戦はもう始まっているってこと。これはアリシュナの使いに違いないわね。」

 「なぜそうだとわかる?」

 「イザナミは「神産み」の神。今のは、きっとこいつらを産み出していたのよ。」

 「だが、鏡には何も…そうか、悪魔は鏡に映らない。」

 「ええ、同時にこいつらは今のアリシュナとは比べ物にならないほど低級ってことね。」

 「しかしこいつ、堂々とアリシュナのいる方向から来たぞ。」

 「そうね。アリシュナの奴、招待状か何かのつもりかしら…」

 異形は幾度となくルイ達を襲ってきた。アリシュナの元へ近づくたび、その数も増えていく。
そして、深い森を抜けたとき、それは姿を現した。

 「すごい数だな…」

 「これがイザナミの城…」

 闇に溶け込むかのような漆黒の城。異形の群れが周りを取り囲むように陣を敷いている。

 「…奴らは今までの雑魚とは少し違うようだ、微量だが神の力を分け与えられている。」

 「ヒット・ザット!!」

 ルイの放った光弾が敵を吹き飛ばした。異形は何もなかったかのように押し寄せてくる。

 「カグツチとハイチはこいつらの相手を、ニニギは計画通り城へ乗り込んで。」

 「しかし…」

 「愛する女を助けるんでしょ?他の事なんて考えなくていいの。」

 「…すまない、これを!ヤサカニの勾玉と言う、何かの役に立つはずだ。」

 ニニギは異形の波を一直線に突き抜け、城へ飛び込んでいった。

 「叩き殺すは、機械仕掛けの闇…ブラック・ナイト!」

 漆黒の鎧をまとった騎士が召喚される。アリシュナの居城にあった仕掛けを改造したものだった。

 「斬り殺すは、静寂に往く天走狗…サイレント・ウィング!」

 白き翼を持った双頭の走狗が召喚される。召喚は尚も続く。

 「突き殺すは、刻まれし白銀の十字…サイン・オブ・ザ・クロス!」

 白馬に乗った白銀の騎士が召喚される。

 「予想外ね…敵が多すぎる。カグツチ、敵陣に突っ込んでも大丈夫?」

 「ああ、俺はこんな奴らなど敵ではない。」

 「よし、カグツチは化け物達を押し返しながら敵陣中央へ、ハイチは迎撃しつつ後退よ!」

 「わかった!敵が雑魚でよかったぜ…」

 「景を成せ、天界の門、冥府の檻、霊界への途、聖なる罠…ザ・ケージ!」

 分厚い城壁が敵陣を囲むように地中から突き出した。

 「ハイチは残った敵を始末して、1分経ったらまた後退よ。一働きしてもらうから。」

 「わかった。」

 「さて、せっかくもらったんだから、有効に使わせてもらうわよ。」

 ルイは詠唱を始める。異形はルイに襲い掛かる間もなくハイチに始末されていく。

 「もうあんなミスはしないわ。ルナティック・ゲイト!」

 ルイの目の前に「聖輪ウロボロス」が召喚される。

 「さあ、あたしなりに使いこなさせてもらうわ!出でよ、悪しき君主を屠る剣、エメラルド・ソード!」

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 「ニニギ様、アリシュナはまたこの地を訪れることはないのでしょうか?」

 「その可能性はある。しかし、アリシュナを討伐しようとこの地へやってきた勢力があるそうだ。
彼らは既に上級神を味方につけている。或いは彼らがすべてを終わらせるかもしれない。」

 「それなら、私達も力を貸しましょう。」

 「…お前に何もなければと思っていたが、奴を殺さぬ限りそれは無理なのかもしれないな。」

 「すいませーん!」

 「誰だ!?」

 「僕はリッヒって言います。アリシュナを討伐するために、仲間と一緒にここまで来ました。」

 「リッヒ…そうか、話は聞いている。私もアリシュナ討伐に協力しよう。」

 「よかった、みんなが向こうで待っています。僕について来てください。」

 「まだ完全には信用できない…サクヤはここで待っていろ。」

 「はい。」

 ニニギは見張りをつけ、リッヒと共に館を出た。

 「あまり館から離れたくない。あとはお前が仲間をここまで呼んで来い。」

 「…もう遅いよ。サクヤビメはいただいた!」

 「なにィ、貴様!」

 ニニギは草薙の剣を引き抜くとリッヒの胸を突いた。リッヒは鮮血をまき散らし、その場に倒れる。
ニニギはそれを確認することもなく、館へと急いだ。しかし、そこで彼を待っていたのは、
憎きアリシュナと捕えられたサクヤビメの姿だった。

 「アリシュナアアアアア!!」

 「そう焦るな。殺しはしない…人質として有効に使わせてもらうことにしよう。」

 アリシュナはそれだけ言うと、すぐにその場から飛び去ってしまった。
残ったのは血塗れで散らばる見張り達の体の一部、アリシュナの食べ残しだけだった。
時を置かずして、ニニギはルイ達の一団に加わった。決戦の準備は着実に整っている。
リッヒはコウモリが死んだことで再び意識を取り戻したが、重傷を負い、戦力は残っていなかった。

 「…イザナミよ、私の殺害はしばし待っていただきたい。」

 「アリシュナか…何故ここがわかった?…まあいい、話してみろ。」

 「どうやら貴方はカグツチを敵に回してしまったようだが、そちらに勝ち目はあるのか?」

 「なるほど、痛いところを突いてくれる…」

 「奴らが消えるまでの間、私が貴方に協力してもいいということだ。
私の魔力と技術、そして戦力を少しの間お貸ししようじゃないか。こうして人質も用意した。」

 「コノハナサクヤノヒメか。ニニギ程度の者であればイザナギでも勝負はできるな…
奴の持つ草薙の剣は厄介だが…いいだろう。ならば早速その魔力とやらを渡してもらおうか。」

 「では、私の血液を少しばかり注がせてもらおう。」

 「…フン、早くしろ。」

 「それでは…真・逆流血!!」

 「ァあッ…貴様、私の血を…!?」

 「イザナミ!?アリシュナ、貴様…!!」

 「イザナギ、待ちなさい、私は無事よ。これで色々なものが手に入った…奴らを殺せるわ!」

 「フフ…フハハハハハハハ!!」

 アリシュナはスーナイ以来、久々に「支配」を選択した。

 「さて、じゃあ俺は少しの間だけ抜けるぜ。」

 「モビリン、どこへ行くんだ?」

 「日本と言えば、行っておきたい場所があるんだ。」

 「こんな時に何を言ってるんだ。」

 「まあいいじゃない。決戦までには戻ってきなさいよ?」

 「ああ、俺だって単なる遊びで行くわけじゃないからな、まあ、一種の賭けってやつだ。」

 「…何か秘策があるということか。」

 「時代が変わっていないなら…可能性があるだけだが、賭けてみる価値はある。
確認だが、神の世界も根本的には現実世界と変わらないんだよな?」

 「ええ、扱いが違うだけで、例えば今私達が立ってる場所は現実世界の大地と同じものよ。」

 「よし…じゃあな。」

 「いよいよって感じがしてきたわね…ハイチ、準備はいい?」

 「ああ、この計画、成功すればいいが。」

 「ニニギが味方についてくれたもの、きっと成功するわ。」

 「サクヤ…どうか無事でいてくれ…!!」

 「イザナミ…お前は俺が再び土に還してやる、この拳でな。」

 数日の後、決戦は静かに幕を開けることとなった。

 「しかし、アリシュナとはそれほどまでに凶悪な存在なのか?」

 「そうね、奴も今では低級だけど神…神になる前もあれほどの力だった…油断はできないわ。」

 「…俺の他にも味方になってくれる者がいるかも知れん、使いを飛ばしてみるか。」

 カグツチは自らの炎から火の鳥を生み出し、四方へ飛び立たせた。

 「だが、神というのは自分勝手なものだからな。そう期待はするな。」

 「ええ…」

 カグツチがアリシュナのことを知っている?確かにアリシュナとて永きを生きてきた存在。
しかし、本来日本と西洋は古くからあまり関わりを持たず、持とうともしてこなかったはずだ。
ましてそれが現実世界と神の世界であればなおさらのことである。
ルイは時空に歪みが生じたことと照らし合わせ、頭の中で状況を整理する。

 「カグツチ、アンタがアリシュナの話を聞いたのって…いつ?」

 「ここ数日のことだが。」

 「やっぱりね…」

 「どうかしたのか?」

 「モビリン、アリシュナが日本を攻めた記録は?」

 「アリシュナはもともとそれほど活発な破壊活動は行っていない。今回が初めてだな。」

 「つまり、あたし達は時代を飛び越えてここに来たわけではないってことよ。」

 「その通りよ。」

 「なんだ!?」

 「姿が見えない…どこから話している!?」

 「母上…か?」

 「カグツチ、いつからお前はそんな親不孝者になったのかしら?」

 「ついさっきからだ。無関係の者に危害を加えるような奴を俺の親と認めることはできない。」

 「お前達は邪魔なんだよ!アリシュナを殺すのは私なの。」

 「いいえ、アリシュナはあたし達が殺すの。」

 「…勘違いするな。私はお前達も殺すのよ!」

 「案外早く解決できるかと思ったが、こりゃあ厄介な奴を敵に回したようだな…」

 「嘆かわしい。我が母親はこのような阿呆だったか。」

 「カグツチ!!母にそのような口を利くか!!」

 「今一度、この場でお前を焼き殺してやろう。」

 「残念だったな、私はそこにはいない。待っていろ、お前達に最高の死に場所を用意してやる!」

 「…素直に待ってるわけないでしょ。私たちも動くわよ。」

 「イザナミ…奴が時空を弄ったかのような口ぶりだったが…」

 「いえ、それはないわ。本来ならイザナミはカグツチを生み、その後死ぬんだから。」

 「そうか、イザナミがそれを知らなかった以上、彼女もまた呼び寄せられた者…」

 「そうだ、時空を壊したのは私だ。」

 「…アリシュナ!!」

 「久しいな、魔法使いよ!」

 「こいつがアリシュナか。どうする?この場で殺してやろうか?」

 「そうね、できればお願いしたいけど、止めはあたしが刺さなくちゃダメなの。」

 「難しいことを言う。」

 「魔法使いよ、貴様、この状況が分かっているのか?」

 「ええ…こっちには上級神がついてるけど、生身が4人…圧倒的に不利ね。」

 「そうだ、例えば…こうだ!」

 「!?…体が、動かない…?」

 「リッヒ!!」

 「貴様!」

 「おっと!これは心強い味方を手に入れたな、魔法使いよ。」

 「ええ、アンタは必ず殺すもの。リッヒを放しなさい。」

 「フン、これは私のものだ。逆流血!!」

 「ァアッ…ゥア!!」

 「リッヒ!!」

 「ぅ…ッ!?リーン様!!」

 「なんだと?コウモリの方は完全に殺したはずだ!」

 「我が血によって復活させた。これでリッヒとはお別れだな!」

 「どうする?奴も殺すか?」

 「フン、これを手に入れた以上、貴様らに興味はない。」

 「逃げるっていうの!?」

 「勘違いするな、私の目的は貴様らを殺すことではない。貴様らなどはなから敵ではないわ!
だが、私が絶対的な存在になった暁には、魔法使い、貴様だけは捻り潰してやる。クハハハハ!」

 「待て!!」

 「駄目だ。奴ら、速すぎる。」

 「まずいな…さっき俺が放った使いにはお前たちの情報も教えておいた。
奴らに利用される可能性があるぞ。」

 「もう一度使いを飛ばすことはできないの?」

 「可能だ、今やっている。」

 火の鳥が再び四方へ飛び立った。

 「間に合うといいけど…」

 魔力式飛行船「スクーダ」は、ヴェルダンドールアカデミー専用の高速飛行船である。
ルイにはアリシュナ討伐の大義名分による権限で使用が許可されている。
動力である魔力は速度の向上とそれによる衝撃からの保護のため、高密度に練り上げられている。
個人的な使用においては、この作業は使用者が行わなければならないが、
ルイにとってはそれほど難しいことではなかった。まさにルイのためにあるような機体である。

 「コイツはいい、凄い速さだ!」

 「目的地は日本のどこなんだ?」

 「どこでもいいわ、日本は狭い国だから。それに、本当の目的地はちょっと違う場所なの。」

 4人は海を越える。ルイは適当な場所を見つけ、スクーダを着陸させた。

 「ハイチ、何だその恰好?」

 「いや、この前霊界で日本人と知り合ってな。日本ではこんな恰好が流行っているそうだ。」

 「そうなの…でも残念だけど、今からもうひとっ飛びしなきゃいけないのよね。」

 「…いよいよ神の領域へ突入ですね。」

 「万物は耳を澄ませ、我手、異界への扉を叩く音、一つ静か。」

 ルイは目を閉じ、口元で人差し指を立てた。

 「サイレンス…」

 空間が割れる。そこからは何かが見えるわけではなく、ただ暗い闇が広がっている。
暗闇は徐々に拡大していき、人が一人通れる程度まで広がったところで静止した。

 「さあ、行くわよ。」

 「…よし。」

 「飛び込め!」

 暗闇は液体のように4人を包み込んだが、一瞬の間をおいて視界は白く変わり、
次には色鮮やかな別世界が彼らの前に現れた。

 「さて…あら?」

 「どうかしたのか?」

 「おかしいわね…時空が歪んでる。」

 「ゲートはもう閉じたようです。失敗したわけでもなさそうですし…」

 「少し時代を弄らせてもらったんだけど、それが影響するってわけでもないし…」

 「時代を弄ったって、目的があるのか?」

 「ええ、もちろん、その辺の神に頼ったって返り討ちにあうだけだもの。」

 「確かに、今やアリシュナも神だからな。」

 「あたしたちが見つけるべき神…それはヒノヤギハヤヲ、別名カグツチよ。」

 「どんな神なんだ?」

 「簡単に言えば、イザナミを殺し、イザナギに殺された火の神だな。」

 「さすがアカシックレコードの精霊、よく知ってるわね。」

 「まあな…そんなことより、急いだ方がいいんじゃないのか?」

 「カグツチが死んだら、この時代に来た意味がないしな。」

 「でも、どうするんです?」

 「こっちに来る前に大体の目星は付けておいたわ。神の居場所はこの鏡が教えてくれる。」

 「そんな道具は俺も知らないぞ、どこで手に入れた?」

 「あたしが作ったのよ。魔力があれば何でもできるってね。」

 「…なんでもありだな。」

 鏡を覗くと、燃え盛る社が見える。景色は徐々に移動し始め、最後にルイ達の姿が映った。

 「よし、そう遠くないわ。場所指定は成功みたいね。」

 「急ごうぜ!」

 周囲は火の海と化している。その中心で今まさに父親に屠られようとしている男がいた。

 「よくもイザナミを…覚悟!!」

 「グゥ…ッ!」

 「待ちなさい!!」

 「間に合ったようだな!」

 「なんだ貴様らは!?」

 「カグツチは殺させないわよ。」

 「ならば貴様らもここで死ね!」

 「オイ、相手は神だぞ、まずいんじゃないのか!?」

 「…フン!!」

 「ガハッ!…カグツチ、貴様ァ…何故だ…」

 「…え、ちょっと、どういうこと?」

 「ここで殺されるのがせめてもの償いだと思った。だが、あんな奴はもう俺の父親ではない。」

 「あたし達を助けてくれたの…」

 「いや、俺の方が助けられたと言ってもいいだろう。…それで、俺に何の用だ?」

 「お見通しってわけね。」

 「神ではないお前達が目的もなしにここまで来るはずがないからな。」

 「アリシュナの討伐に力を貸してほしいの。」

 「ほう、アリシュナ…聞いたことがある。」

 「?…そのためにあたし達と一緒に時代を飛び越えてほしいんだけど。」

 「…一度は捨てた命だ、いいだろう。案内しろ。」

 「ええ、こっちよ。」

 やがて社は焼け落ち、そこに横たわる男の死体は天高く灰へと変わり、朽ち果てる…
はずだった。しかし、音もなくそこに現れた一人の女がそれをさせなかった。

 「…体が、動く?」

 「何をしてるの、イザナギ。」

 「お前は…イザナミ!?死んだはずでは…?」

 「…来なさい、奴らは皆殺しよ!!」
 「サクヤビメ様、お逃げください、奴が来ます!」

 「ですが…」

 「雑魚共がァ、醜き体で鮮血の舞を見せよ!」

 「あなたがアリシュナ…!」

 「なんだ貴様は!?貴様ごときが呼んでいい名ではないわ!!」

 「サクヤビメ様!!」

 「…ガアッ!?」

 「間に合ったか!」

 「ああ、ニニギ様…」

 「サクヤ、無事か?」

 「はい、ニニギ様。」

 「アリシュナとやら、これは草薙の剣という。お前ごときが太刀打ちできる代物ではないぞ?」

 「グゥ…」

 「早々に立ち去るがいい、二度とここへは来るな。」

 「ニニギといったか…その名、しかと記憶した。また会おう!」

 「アリシュナ…」

 ルイはリッヒに計画のすべてを話した。アリシュナを自らの手で倒す唯一の手段が失われた今、
その討伐には神の力が必要である。日本へと出向き、上級神を味方につけることができれば、
現時点でアリシュナを討伐するには十分な力を得ることができるはずだ。
今回はルイ一人の力ではどうすることもできない、また、それはルイに限ったことではない。
確実に仲間の力が必要となるため、今まで以上に団結して決戦に臨まなければならないのだ。

 「では、今から皆さんをエルフの隠れ里にお連れします。」

 「一族の誰もたどり着けなかった場所…」

 「そうは言っても、そんな場所、さすがに歩いて行くってわけにもいかないんでしょ?」

 「いえ、歩いて行きますよ。」

 「それなら俺達の一族が知ってるはずだ。俺達がたどり着けなかった場所なんて地上には…」

 「隠れ里だもの、普通には入れないさ。」

 「…なるほど、特殊な結界でも張ってるってことかしら?」

 「正確には力場ですね。特殊な力で空間が曲がってるから、普通に通過することもできます。」

 「そうか、つまり俺達もその場所を通ったことはあるってことだな。」

 「そうかもしれないね。じゃあ皆さん、行きましょう。」

 その場所は現在でも鉄道の通るトンネルの入り口だった。
リッヒが近付くと、滑らかな曲線を描いていたトンネルの入り口は液体のようにその形を崩し、
代わりに周囲の風景と比べ明らかに異質な光景が目の前に現れた。
そこは小川が流れ、木々が生い茂り、様々な生き物が穏やかに暮らす場所だった。

 「長老、お久しぶりです。」

 「その声…リッヒか!?」

 「はい…帰って、まいりました。」

 「なんと…」

 「感動の再会というヤツか。」

 「長老様、あたしは魔女のルイという者です、以後お見知り置きを。」

 「ほう…それで、その魔女とやらが何の用だ?」

 「長老、彼らはアリシュナを討伐する者達なんです。」

 「そうか、それでお前も協力を…ということは…」

 「はい、「聖輪ウロボロス」を。」

 「…いいだろう、ついて来なさい。」

 エルフの長老は、長老と呼ばれるにはあまりにも若く、美しかった。
ある程度成長すると極端に成長速度が遅くなるのはエルフの特徴である。
しかし、それだけではないだろう。リッヒが言うには数十年前に長老の後継式があったようだ。
もちろん長老の任期が決まっているというだけで、リッヒが式に出席していたわけではない。

 「聖輪ウロボロス」はその名の通り、聖なる施しを受けた巨大な輪だった。
黄金に輝くその輪は、直径約10メートル、幅2メートル、厚みも1メートルほどある。
ルイはリッヒがこの輪のことを武器と言った理由がわからなかった。

 「…で、なんなの、コレ?」

 「これは「聖輪ウロボロス」と言って、聖なる光を放つ退魔の最終兵器です。」

 「でも、エルフの中には使える者がいなかった…」

 「そうです。」

 「なるほどねぇ…ねえ、ハイチ?」

 「ああ、俺達にも使えないな、さすがに。」

 「どうしようかしら…そうだ、長老、ちょっと細工をしちゃってもいいかしら?」

 「ああ、どうせ使いこなせぬ代物だ。かまわない。」

 ルイは呪文の書かれた札を取り出すと、聖輪に貼り付けた。

 「これで、もし必要になったらすぐに召喚できるわ。」

 「へえ、お前、便利なもん持ってんだな。」

 「モビリンがそう言うくらいなんだから、便利なんでしょうね。」

 「俺達には使えないのか?」

 「少なくとも生体には無理ね…ジュースになるわよ。」

 「ハハハ…そりゃ御免だな。」

 「ところで、これでこっちでできる準備はすべて整ったわけだけど…」

 「おう!いよいよってことだな。」

 「そうだ、日本へ行こう。」

 「魔力式飛行船「スクーダ」、発進よ!!」
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