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今日の夕食は6時、平均的な時間にいつも通り学食で食べた。
学食を出たら大雨が降ってきたけど、僕は傘を持ってなかった。
とりあえず建物の中である程度雨が弱まるまで待つことにする。
…30分ほど待っただろうか、空模様が少し落ち着いてきた。
とにかくこんなに時間を使う予定ではなかったし、やりたいこともあったので早速帰路につく。
大学を出て2回目の角を曲がったところで僕はそいつに出会った。
そいつはひどく汚れた格好で僕のほうを見つめている。
偶然目があっただけかと思ったが、僕が動くと少しも間をおかずに視線が追ってくる。
とりあえず声をかけるしかなかった。
「何か…?」
まあ初対面だし、これ以上の言葉も咄嗟には出てこなかったわけだ。
「ボクハアイサレタカッタンジャナイ…」
日本語だったが、人間の声ではなかった。
驚かざるを得なかったが、ひょっとすると僕は大変なものを見つけてしまったんじゃないか?
とりあえず平静を装ってそいつを家に連れ帰ることにした。
露骨に驚くと警戒されると思ったからだ。
ところが、そんな心配をするまでもなく、そいつは簡単に僕の言うことを聞いた。
声を聞いた時確信したが、こいつは多分機械だ。
リアルに作られた肌は、シリコンか何かだろうか?
とりあえずお茶を勧めてみたが、予想通り断られた。
「なんであんなところにいた?」
「ボクハタダ、アイサレカタッカンジャナイノニ…」
「それはわかったから。」
「オトウサン、キョウボクウォステタ」
「を」の発音が少しおかしいと思った。
もとからおかしかったのかもしれないし、もしかすると故障かもしれない。
「…で、これからどうするつもり?」
「コレカラドウスルツモリ…?」
この他にもいくつか質問をしたが、限られた言葉の範囲でしか会話ができないようだった。
学習能力はあるのだろうか?
「734958×958337の平方根は?」
「ヘイホウコン?」
「ああ、ルートのこと。」
「ルートノコト」
「…平方根とは、ルートと同じものだ。」
「839248」
「どれどれ…ホントだ、正解!ってまあ…当り前か。」
ルートすら知らなかったらどうしようかと思ったが。
それにしても一瞬で答えた…さすがは機械だ、が、平方根くらい教えとけよ。
「2の平方根は?」
「1」
「うーん、間違い、じゃないような…でも違うような…」
その後も何問か同じような問題を出してみたが、どの問題の解答も一瞬だった。
学習能力はあるらしい、そして自動で整数に四捨五入する機能もあるようだ。
ということは、もちろんこいつは計算のために作られたものではない。
まあそんなことはこの姿を見ていればわかる。
平方根も知らなかったし。
そもそも僕はそんなことが知りたかったんじゃない。
こいつはこれからどうするんだろう…?
その後も僕の質問は続いた。
答えられない質問も山ほどあったが、少しずつわかってきた。
僕としても、こんなに質問をしたことはなかったので少し疲れた。
何のために作られたかはわからない。
今まで父親と二人、(本人の認識では)楽しく暮らしてきたようだ。
自分が何のために作られたのかを知らないロボット。
ロボットが自分の用途を語る場面は今までに数多く見てきたが、
これほどの知能を持ちながら自分の用途すら知らないだなんて…
こんなのは初めてだ。
…たぶんこいつは、自分がロボットであることは理解している。
でも、ロボットが人間に使われるために作られるものであるという考えはないんだろう。
だとすれば、これはおかしいことでもなんでもない。
僕たちだって、生まれた時から自分の生きる理由を知ってるなんてことはないんだから。
こいつは人間なんだ。
だったら、こいつにもあるんだろう。
僕たちが、(少なくとも幸せに暮らしている限りは)必ず持っているものが。
「とりあえず最後の質問だ、お前の望みは何だ?」
「ボクノノゾミ…アイシアイタイ」
そう言い終わったとき、このロボットは動かなくなった。
愛という感情が機械の限界を超えたのか?
…どうやらただの電池切れらしい。
とはいうものの、こんなロボットがそこら辺で買えるような電池で動いているわけもない…
なら、僕の目的はただ一つだ。
後期から知能情報工学科に転学科しよう。
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