人助

俺はよく人を助ける。

これは事実なのでどうすることもできない、読者もとりあえず納得しておいてくれ。

助けるといってもその範囲はかなり広く、肉体的労働を強いられるものから金品の貸し借り、
友人にテスト勉強を教えるなど、実に多種多様だ。

自分としては「頼まれたら断らない」ことが原因だと思う。

が、これは世間一般の所謂「良い人」とは少し違っている。

まあ軽めの理由から言うと、「自らの所属する団体をアピールできる」ということ。

大きなところでいえば宗教。

「みんな僕みたいな人なんですよ」とか恩を売りまくった後に言えばそれなりの効果もあるだろう。

ちなみに俺はそこまで狙ってもないし、恩を売りまくってもないので、
気軽にこういう意見が言えるわけだ。

大切なのは「こういった用途にも使える」という可能性の問題だと思っている。

実際はこれだけの人数がいるわけだし、そりゃ中にはおかしな奴もいるだろうよ。

こっちだって妄信してるわけじゃないんだからな、最初は疑ってかかるもんだ。

ある程度信じてみて、信じただけの結果が実際に返ってきたから納得してるってことだよ。

他の宗派を含め、仏教というものの根本的な考え方は自らの実践によって幸福をつかむこと。

まあこれはとんでもなく簡略化して言ってるから本当はもうちょっと複雑だけどね。

アンタも仏教徒ならそれくらい知っておきなよ、恥ずかしくないように。

ついでに言わせてもらうのもどうかと思うけど、神道のシンボルって結構格好いいよね。

運命の存在を信じる一番簡単な理由の一つ、宗教が生まれながらに決まっていること。
宗教ってのは本来生活様式にかなりの影響を及ぼす上、簡単には変えられない。
つまり、努力して後から変えることはできても、運命というもの自体は存在すると言っていい。

…まあそんな前向きな話は置いといて。

このように小さな理由がいくつかあるわけですが、当然主となる大きな理由があります。

これは人の頼みを引き受けることで連鎖的に起こっているのかもしれませんが、
僕は結構いつでも苦労してます。

人生＝苦労することだと言ってもいいでしょう。

ところがですよ、他人の苦労を背負ってまで苦労してる僕よりも苦労してる人が山のようにいる。

この現状、軽く絶望せざるを得ませんね。

特に他人の必死の頼みを聞いている時などは、世界に絶望しかけます。

こいつの苦労を全部背負って、そして僕が死ねばいいとさえ思ったこともありました。

これはなんというか、前向きな方の思考ではないんです。

「いなくなりたい」とかに近い感覚なのかもしれません。

なんなんでしょうね、こういうときは自分で自分がわからなくなります。

なぜかって、もちろんなんでそこまで思えるのかがわからないからですよ。

そんな他人の苦労をちょっと受け持ってあげるくらいのことで絶望って…と思うでしょう。

その通りだと僕も思いますよ。

実際に絶望しきってしまっていないのは、そういう常識の面から考えることができているからかと。

ただ、自分は楽ではないなりにも何とか一人で解決できる程度の苦労を背負ってきたのに、
今目の前にいる人はこんな歳になっても未だに一人で解決できないような苦労をしている…

単純に日頃の行いが悪かったからという人もいるかもしれません。

でもそんなに簡単なことじゃないと思うんです。

日頃の行いって、確実に周囲の環境に影響されることじゃないですか。

言ってしまえば、自分自身で簡単に決められるものではないと思うんです。

そしてその結果、レポートの一つさえまともにこなせなくなってしまった。

これは悲しいことです。（もちろんこの台詞には当人への皮肉も込めていますが）

まあそういうことを考えていると、親切心からではなく、半ばどうでもいい気持ちになり、
結果として人からの頼みをほとんど断らないということになっているようです。

結果としては協力しているけど、協力する気は微塵もないみたいな。

全部が全部そうということではないんですけどね。

周りを見渡してみろよ、ホントにみんな苦労してるよな。

…僕はこれからも、後ろ向きに人を助けて生きて行くんだと思います。