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ファントム・アポカリプス エピソード:センガ

 満月が笑っている。その部屋は驚くほど静かで、しかし、何かがそこにいた、
そんな残像を記録するそのまさに一瞬を表現したかのように、酷く荒れ果てていた。
さて、その部屋の天井付近で何者かが息をひそめ、辺りの様子をうかがっている。
そこへ1人の男がやってきた。彼は敵ではない。しかし、味方とも限らない。

 「どこ見てんの?こっちこっち。」

 天井から飛び降りると、やはり彼は銃を構えた。

 「おいおい、言っとくけど、俺は奴等の仲間じゃないから。」

 「そうか、じゃあお前はなんでここにいるんだ?」

 「なんでもいいじゃん。倒すんでしょ、アリシュナ。」

 「…ああ、そうだな。」

 「へぇ、ものわかりいいね。俺の名はセンガ。君は?」

 わかっている、彼の名はモビリンだ。

 「モビリンだ。」

 「ああ…それにしても、静かな城だね。もう誰もいなくなったみたいだ。」

 センガとモビリンは城の最上階へと続く階段を駆け上っていく。

 「この扉の向こうに奴がいる…センガ、行くぞ!」

 「オッケー。」

 さて、モビリンの腕前を見たことがなかったセンガ、ここは少し様子を見てみたいところではあった。
だがまあ今回は敵が敵なだけにそれは諦めることにし、協力して扉を突き破る。
今まで飽きるほど見てきたその銀髪。センガは静かに殺意を集中させる。

 「見つけたぜ!アリシュナアアアアア!」

 「何を熱くなっている?おかしな奴等だ。」

 「おい、そんなに熱くなるなって、奴のことはよく知ってるだろ?簡単に勝てる相手じゃない。」

 「…そうだな。」

 「ここはチームプレーといこうよ。俺が至近距離で奴を引き付ける、好きなだけ撃ち込んでやりな。」

 ようやくこのときが来たのだ。一番おいしいところをモビリンに取られるのは面白くない。
止めの一撃はこの手で直接叩き込んでやる。どうやらモビリンも援護に徹してくれているようだ。
もしかすると、彼はアリシュナにはそれほど恨みがあったわけではないのかもしれない。
ならば好都合、この獲物はいただいた。それに、どうやら今まで戦ったことがなかったせいで、
過度に心配していたらしい。動きが隙だらけだ。センガはアリシュナの体に傷を刻み込んでいく。
しかし趣味の悪い部屋だ。部屋の四方に奇妙な形をした甲冑が身構えている。
センガにもそんなことを気にするような余裕が出てきた瞬間、アリシュナが笑う。

 「まずは1人ッ!」

 「ッ…しまっ…」

 四方の甲冑が一斉に突進してきた。センガは高く跳び上がってそれをかわす。
なるほど、さすがにこの程度は準備しているのか。モビリンが避け切れず剣に突き刺された。

 「センガ、頼む…仇を…」

 「ああ、まかしときな。」

 危ないところだった。彼との間にあと少しでも友情のようなものが芽生えていたら、
状況は一変していたに違いない。それも、極めて不利な方へと。跳び上がったセンガの目に前に、
アリシュナの牙が迫る。なるほど、確かに空中では分が悪い。アリシュナの襟を掴み、
下に回り込むと同時にアリシュナを蹴り上げ、自分は地面へと降りる。このときセンガは気付いた。
アリシュナの傷が回復している。やはり言い伝えは本当だったようだ。

 「気付いたようだな。そう、君では私に傷を与えることすらできない。」

 「…お前に傷を与えられるのは、狼の血を引く魔人のみ。」

 アリシュナの表情が変わった。

 「この格好、結構気に入ってたんだけど。まあ仕方ないか…」

 センガの筋肉が波打つ。服がはじけとび、漆黒の毛皮が姿を現した。

 「どうだ、吸血貴公子殿。死が迫っているぞ?」

 「貴様ァ…」

 アリシュナの背を蹴り、地面に叩きつけた。そのまま顔の上へと着地する。
牙の折れる感触が伝わってきた。すぐに頭を掴み、上空へ放り投げる。
片方の腕で腹を貫き、もう片方で足を引き千切った。両足を同時に引き千切ったため、
骨盤が一緒に抜け出し、アリシュナは内蔵を撒き散らす。センガの顔に帰り血が飛び散った。

 「ああああああ!!」

 アリシュナの体は無数のコウモリへと姿を変えて飛び散り、上空で再結合した。

 「黒く、汚い…なんと醜き体よ。醜きものを、私は許さない!」

 アリシュナの姿が消えると同時に彼は後ろに立っていた。腹をやられた。
さすがに一筋縄とはいかないようだ。センガは空中を駆け上がり、アリシュナの足を掴む。
そのまま地面へと叩きつけ、天井に吊られている巨大なシャンデリアを投げ下ろした。
アリシュナの体は潰れると同時に血液と化し、針状になってセンガの体を貫いた。

 「ウォオオオオオオオオオオオオ!!」

 センガの雄叫びと共に血液はその形状を保てなくなり、徐々に沸騰し始める。
血液は素早くセンガのもとを飛び去り、再びアリシュナが姿を現した。
センガは自らの爪をへし折ると、アリシュナの体めがけて投げつけた。
爪がアリシュナの体ごと壁に突き刺さる。

 「ゴフ…」

 「これが正解か…長かったが、これで終わりだな。」

 そのとき、センガの体を激痛が襲った。

 「う゛…ぉお!」

 「…!貴様…あの魔法使いだったか!!」

 「さすがに変身のタイミングが早すぎたようね…あたしはルイ・ザ・ウィザード、お前を殺す者よ!」

 「フハハハハ、だがどうやって?その術を貴様は今、失ったのだよ。」

 「ええ、そうみたいね…待ってなさい。いつかお前を殺してあげるわ。」

 ルイは詠唱を始めた。アリシュナは動くことができない。詠唱が続く。

 「とりあえずさようなら。また会いましょう…そのときがお前の最後だ。ルナティック・ゲイト!!」

 アリシュナの前に巨大な門が出現した。扉が開くと同時にアリシュナの体が吸い込まれる。
やがて扉は閉じ、徐々に消えていった。

 「フゥ、失敗か…魔狼の力もなくなっちゃったし。とりあえずモビリンを蘇らせてあげなくちゃね…」

 ルイはモビリンを担ぎ上げる。あと少しだった。あと少しで自由を手に入れることが出来たのだ。
だが、まだ終わってもいない。彼の次なる目的は決まっていた。魔狼を失った今、
アリシュナの抹殺は、もはや神々の力をもってしか期待できない。

 彼の次なる目的地、それは神々の国、日本である。
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