忍者ブログ
虚節イッター:記事を更新したいお年頃になってしまったようです
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ファントム・アポカリプス エピソード:ジャック=オ=ランタン

 1年1度のハロウィンのお祭り。その年はジャックが交わした千年契約の期限だった。

 「僕がなんとかしなければ、今年はみんなの笑顔を守ることができないのです…」

 ジャックが千年前に契約を交わした魔神、バッフェンドートー=ゼルデラヌスは、
人間の思念が生み出した魔神である。或いは妖精、或いは神々、或いは怪物。
そういったものに触れ、興味を持った人間が残した伝承、風習をもとに、ハロウィンは生まれた。
そしてその数年の後、ジャックが生まれた。以来ジャックはハロウィンを守り続けてきた。
初めはお祭りとして楽しまれるだけだったハロウィン。それは今も変わらないのかもしれないが、
認識する人間が増え、様々な様式が現れ始めてから、事態は一変した。
ハロウィンの起源は、カトリックの信仰の儀である。ハロウィンを正式に行うものは、
同時に必ず魔除けを行っていた。これにより世界のバランスは保たれていたが、数百年の後、
ハロウィンの意味を間違えてとらえるものが現れ、その中には本当に悪魔の存在を信じる者、
その出現を望む者なども数多くいた。そして、その魔神は生まれたのである。

 ジャックは驚いた。人間はこれほどの魔神をも生みだすことができるのか。
しかし、自らも人間によって生み出された存在である以上、彼の行動は決まっていた。
バッフェンドートーのもとを訪れ、圧倒的な力をもってこれを消滅させる。
しかし、人に作られたと言えど、魔神の力は強大だった。当時のジャックは、
魔神に比べ圧倒的な認知度を誇っており、強大な力を手にしていた。
それでも彼を滅することはかなわず、千年の間、互いに干渉しないという契約を交わす。
ジャックに干渉しないということは、ジャックの守るハロウィンにも干渉しないということである。
この契約により、世界は再び平和なハロウィンを手に入れることができた。

 それが千年前の話。ジャックは不安だった。千年前、彼を滅ぼすことはかなわなかったが、
勝負にはなっていなかった。闘いはジャックの圧勝だったのである。
その力は彼を善の存在として信仰する人々の強い意志によってもたらされていた。
しかし千年が経ち、ジャックの存在自体は幅広く知られるようになったものの、
その中には彼をただの一怪物、あるいは亡霊の類としてしか見ぬ者が数多くいた。
ジャックの力は衰える一方である。しかし、彼はそうなることを予想していた。
そして、まだ強大な力のあるうちに、彼は「王様の爆弾」を作り出した。
500年の後、その巨大なカボチャの中に新たな生命を発見する。
これでこの爆弾の使用により自らの命が絶たれようとも、後継者が役目を引き継いでくれる。
しかし、この千年以上の長い時間の中で、ジャックはこの世界に触れすぎた。
この世界を失うのが惜しい。この爆弾を使うのは、死の間際にしようと決める。

 そして彼はかつての契約の地にたどり着いた。魔神バッフェンドートー=ゼルデラヌス。
願わくば、二度と見たくないその存在。何者かの手によるか、
もしくは自然に消滅していくれていればどんなによかったか。
ジャックの予想通り、自分とは反対にバッフェンドートーの力は増大している。
力を手にしたバッフェンドートーが交渉に応じるはずもなく、千年越しに2人の戦いが幕を開けた。

 開始早々、先手を取ったのはバッフェンドートーだった。彼はマントを翻すと、
同時に両眼から青白い閃光を放った。ジャックは地中に逃げ込む。

 「マッテイタゾ…キョウガキサマノメイニチダ。」

 「僕の嫁!力を貸してほしいのです!」

 ジャックは地中から飛び出すと同時にバッフェンドートーに向けて大量のカボチャを投げつけた。
カボチャは彼にあたると同時に破裂し、それが次の破裂を誘発して大爆発が起こった。

 「ドウシタ?アノヒノキサマハ、ソンナモンデハナカッタハズダ!」

 「手加減してあげただけなのでございますです。」

 「…フンッ!ダァア゛!!」

 バッフェンドートーが口から赤い閃光を放った。それは周囲の空間を歪めながら、
一直線にジャックのもとへと突進してくる。

 「ランタンッビィイーーーーームッ!!」

 ジャックは手にしたカボチャから黄色い閃光を放つ。2つの閃光は空中で衝突し、
衝撃波を四方八方にまき散らしながら放出を続けた。やがて空間の歪みは限界を超え、
視界を一瞬で黒き大地に変えるほどの大爆発が起こった。

 「これは…まずいのです…!」

 「グ、ナカナカヤルナ。シカシカツテノキサマホドデハナイ…ツギデオワリダ。」

 轟音と共にバッフェンドートーが周囲の大気を吸収し始めた。
彼はあらゆる物体の質量を歪め、強引に吸収を続けた。ジャックは素早く立ち上がる。

 「もう、仕方ないのですね。」

 ジャックは最後の力を振り絞り、上空から巨大カボチャを召喚した。

 「王様の…爆弾。」

 カボチャはバッフェンドートーに吸い込まれていった。視界は音もなく、白く染まった。
その一瞬の閃光が、彼の最後の記憶である。

 こうして魔神は死んだ。ハロウィンは新たなるジャック=オ=ランタンによって守られてゆくだろう。

 ハロウィンの平和。…それだけが、今は亡き彼の最後の望みだった。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
必読・重要記事
新基(FAQ)

密集(コメントへの返答)

空言(掲示板リンク&使い方)

共感(カテゴリー解説)

拾人(管理人について)

総括(まとめ@wiki)
更新情報
総括」最終更新日:2014.03.09

年表」最終更新日:2012.09.17

分別」最終更新日:2012.10.09

評漫」最終更新日:2013.03.03

其肆」最終更新日:2013.03.03

七二」最終更新日:2013.03.24

柱線」最終更新日:2015.02.01

替歌」最終更新日:2016.08.14
ブログ内検索
過去アーカイブ
2018
01 02

2017
07 10 11

2016
01 02 03 04 05 06 07 08

2015
01 02 12

2014
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2013
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2012
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2011
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2010
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2009
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2008
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12

2007
09 10 11 12
新着コメント
[02/18 わらもこと]
[06/15 拾人]
[06/12 s]
[10/23 ブラッディX]
[08/11 拾人]
最新記事
(02/10)
(02/04)
(02/03)
(02/01)
(01/31)
(01/30)
(01/29)
(01/28)
(01/27)
(01/26)
(11/28)
(10/25)
(07/08)
(09/25)
(09/08)
(09/04)
(09/01)
(08/23)
(08/11)
(08/07)
プロフィール
HN:
拾人
性別:
男性
QRコード
アクセサリ
忍者ブログ [PR]