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ファントム・アポカリプス エピソード:シモン=パップス

 コッドロッド一族、それはこの世に知らぬものはないとされる流浪の旅団。
ある者は彼らをアカシックレコードの精霊と呼ぶ。ジーグレイ=コッドロッドもその一員である。
彼はこの一族に生まれたことを誇りに思っていた。大昔から現在に至るまで、その全ての記録を、
彼は生まれながらに所持していた。まるで世界を理解したかのような感覚。
それに、コッドロッド一族の者は皆優しい。ときに喧嘩をすることもあったが、
日々行動を共にし、皆が強い絆で団結していた。

 その日もジーグは普通に目を覚ました…はずだった。

 「おはよ~う、シモン=パップス。」

 「よく眠れたようだな。」

 「シモン?…なんだ、君達は?」

 「何って、お前に決まってんだろ!」

 「決まってんだろ!…アハハハハハ!!」

 「ほら見て…あなた、死んじゃったのよ。殺したのはア・イ・ツ。」

 「なんだって!?」

 「ジーグとしてのお前は死んだ、今のお前はシモン=パップスだ。」

 「あと、早く気付けって。お前、ちゃんと声出てないぜ?」

 彼は自分がただ叫び声を上げ続けていることに気付いた。

 「のど、潰れちゃったんだね。かわいそ~う。」

 「つーか、お前の人生、もう終わりだな…せめてアイツぐらい殺っとく?」

 「あ…あ…!!」

 シモンはスーナイに掴みかかった。左目をえぐり、体を掴んだままあちこちに叩きつけた。
このまま頭を殴り割ってやろうと腕を振り上げた瞬間、全身に激痛が走り、彼はその場に倒れた。

 「う~ん、やっぱ早かったみたいだね。」

 「ただでさえ死んでるってのに、蘇ったとたんに暴れ過ぎだぜ。」

 「うるさい…返せよ。僕の体を…僕の仲間を!!」

 「だから、お前死んでんだろ!気付けよ、みんな死んでんだよ。」

 「ああ、本当に可哀想な子…」

 「う、嘘だ…嘘だぁああああ!!」

 「君、いちいちうるさいな。ちょっと意識飛ばしてもいいかな?」

 「おっけ~い。じゃあね~…」

 シモンが次に目を覚ましたのは、牢屋らしき場所の中だった。

 「お、目が覚めたみてーだぜ。」

 「シモンちゃん、ほら、見てごらん。お前を殺そうとしてる奴がいるよ。」

 巨大な羽を生やした大蛇がこちらを睨んでいる。

 「殺らなきゃ殺られるってやつだね。」

 「嫌だ…僕はまだ死にたくない!!」

 「だ~か~ら~…まいっか。じゃあ頑張ろうよ、ね?」

 「君の力、見せてもらおうじゃないか。」

 「ちょっとだけなら力貸すよー。」

 シモンは大蛇の羽をへし折り、胴を千切って腸を撒き散らした。

 「へぇ…あなた、なかなかやるわね。」

 「助かった…でもなんで?僕にこんな力は…」

 「いろいろ弄られちゃったのね、きっと。」

 「おっと、次の敵がお出ましだぜ。」

 「!?さっきまでそこには何も…」

 「そんなこと言ってる場合じゃなくね?」

 こうして来る日も来る日も彼は闘い続けた。彼らは日を重ねるごとに少しずつ増えていった。
ネイ、クレル、ソーキッド、シュルキ、レムリント、クレザリウス、ヘン、トルトー、エルトレア、
ファンゴ・ズーウー、クリッチ・レム、ミュヒン、ヴァリレイ、マ・モ、エピー、ラゴギ・サン…
彼らは名前を教えてくれた。また、終わりの見えない魔物との闘いにおいても力を貸してくれた。
襲い来る敵も尽きることはない。一角の馬、犬の頭を生やした女、3つの頭をもつ犬…
死闘を繰り返すうち、彼は気付いた。これらは全てが幻であり、それを作り出しているのは、
まぎれもなく彼らだった。しかし、どうすることもできない。魔物の攻撃を受けると、
脳は実際に痛みを感じている。闘いを放棄すれば、待っているのは死だ。

 ある日、彼の死闘はまだ続いていた。体が軽い。初めは現れる度に恐怖していた魔物達も、
今では鍛練の道具程度にしか感じなくなっていた。いつものように竜の首を落とした。
そのときだった。突然牢屋の扉が開く。

 「…君達は…なんて趣味が悪いんだ…」

 「アハハハハハハ!!」

 そこに立っていたのは、自分と同じ種族である1人のゴブリンだった。こんなものまで使って、
彼らは一体自分に何をさせようというのか。

 「ほ~ら、次のターゲットはアイツだ。」

 「早くやっちまえ。この程度の敵、どうってことねーだろ?」

 「…クッ!」

 シモンはゴブリンの首を掴んだ。大丈夫、これは彼らが作り出した幻なのだ。

 「アッハハハハハハ!!」

 「何がおかしいんだ!?」

 「ぐ…ジーグ、兄さん…」

 モビリン…間違いない。生きていたのか…ああ、これは幻なんかじゃない。
待て…自分は今、彼に何をしようとしていた…?

 「うん。殺そうとしてたよね。」

 「まあ!やらせたのは!俺たちだけど!?」

 「アッハッハハッハハハッハアハハアア!!」

 シモンはもはや限界だった。そうだ、モビリンにこの苦しみから解き放ってもらおう。
さあ、モビリン。僕のここを撃ち抜くんだ…潰れた喉で汚い叫び声を上げるのはもうやめた。
シモンは無言のまま、自らの胸を指差した。

 「そんな…嫌だ!」

 「嫌だ!…だってよー。」

 「兄さん、お願いだ!話を聞いてくれ!」

 「ダメダメ、もうシモンは手遅れなのー。」

 「頼むよ…まだやり直せるはずだ!」

 「おーい少年、さっさと撃ってやりなよーぅ。」

 「クッ…」

 「アハハッヒィイイー、アハハハ…」

 「さらば…その無念は、アリシュナの死をもって晴らそう。」

 「お?撃っちゃうのか?」

 「来るぞ来るぞ~!」

 シモンの体に銃弾が撃ち込まれる。彼の体の中で鐘の音が鳴り響いた。

 「うひょ~撃ちやがった~!!グギャ」

 「本当に撃っちまうとは…グ…」

 「あ…なかなか、面白かった…わ…ぅあ」

 「それが君の望んだ最期だというのであれば。…ぐぅお!」

 「アッハハハハハハハハハハあああああああああああああああああああ」

 彼らは次々と死んでいった。なんと清々しい気分なのだろうか。
これでようやく、この苦しみから解放されることができる…

 ありがとうモビリン、君はいつまでも、僕の親友だ。
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