斬禍

不穏の鳴動　我らの平穏は一瞬で崩れ去る

暗黒を背に受け民を嘲笑う黒き王は　呪われし血族の軍勢を放ち

嗚呼、かつての同胞は　この眼の前で生を断たれた

悲しみと憎しみを怒りへと換え　男は再び剣を手にした

英雄は誰が為に涙を流し　虚空を稲妻と駆け敵を切り裂くのか

我が胸に秘めし一輪の花は　惨く散る時も美しき華のままで

美しきあの日の想いを乗せた剣閃を赤く濁らせ　今刻は来る

大地に轟く狂気の叫びが　全てを飲み込む邪悪な渦となって迫り

人々の悲鳴と怒号をかき消して　神々への供物へと変えてゆく

天への反逆は重罪か　それでも抗うは残されし者の運命

一振りの下に禍を断つ古の剣　エデンズサヴァイバーが哭く

叫ぶのだ！　王を殺せと叫ぶのだ！

神すらも喰らうとされた英雄　己の身体も精神も剣へと捧げ放つ

暗雲の先に望むべき青空の再来を信じて　今

譲渡

その宝は玉ねぎの皮を剥いた後にあった

次の日には庭先の飼い犬の欠伸の先にあった

そして昨日は君の目の中にあった

結局今日には全て僕の目の中に戻ってきたが、輝きは失っていた

時間が巻き戻って僕の目の中は赤く染まってしまった

こぼさないように周囲を見回して君たちを探すんだ

君たちの中に次の玉ねぎが存在しているのだから

君の飼い犬は舌を出して次の玉ねぎを待ち望んでいた

だから僕がもし君たちを見つけられなかったときは、僕自身がたまねぎさ

狭苦しい庭先の中はそれでも賑やかで楽しい

君たちが君たちを探す僕を見下ろして馬鹿にしているからさ

だけど宝がまた君の目に戻るのなら、進んで玉ねぎになりたい

この宝は君の中にある時にだけ、透明に輝きを放つのだから

任務

クリアになるためにすること 電波塔からジョーカマチを見下ろす

期待されないスーパーヒーローの投げ槍な槍投げ オーディエンスの馬耳東風

いつかの秋を引き戻すために踏み躙ったレール 乱雑ナイフとフォーク

イディオムとピンインの覇権争い プレジデント懲戒解雇には程遠い無関心

一つだけあえて残すスピンカッター 古くから伝わる最速攻略のセオリー

数秒唱えてすぐ得られる程度の力はソニック エコロジカルサクリファイス

ジャンクフードにもかけます醤油 不定期なバスの天井にまたがって行こう

無意識なレベルでとても寒いよネオファミリー 野良犬と夜盗のギルド

歯切れの悪い皺くちゃの表情を一度見てアンダースタンド 我ら信頼と実績のアサシン集団

ボウズの重い腰が上がったようだ 白銀に鮮血飛び交うショータイム

星々

なにげなく振り返った場所に何もなくて安心して

ゴールに向かわない人たちの姿ばかり見て納得して

帰り道をたどる目の中が青くてもう　死んだような気分だ

「地上の光と空の光、揃って逆転する頃にはスーパースター」

非力な僕らは輪ゴムで電柱に縛り付けておこう

無能な奴らは花を添えてスレスレを通り過ぎよう

行き先を見据える目の中が赤くてもう　死んだような気分だ

「太陽の右手と月の左手、揃って繋がる頃にはウルトラスター」

無意識の世界は灰のように薄く苦い想い出に変わって

限りある意識がまた誰かに食いつぶされた怒りを大気中に放った

ただ前を見つめた目の中が白くてもう　死んだような気分だ

「空想の命と現実の命、揃って一致する頃に鳴り響くトースター」

末法

土塊だらけの解放世界 情景散策に従事する昆虫

亀裂に漸近される大河の洞 睡魔に溺れ笑う古代魚

増殖が反転急降下の失墜 頭二つ互い違いの雛鳥

耳穴から入る異色希少咆哮 親族の躯を食む害獣

食用機械退廃の残骸 地中へ遺棄放置に氾濫の輩

濁悪に鉄槌を霧雨に雷華を 西方極楽浄土の天僕

烈火の掩蓋と妄想に嗚咽す 狂気へと怒号す魔民

豪壮坊僧焦燥葬送 混同し握り捩れ蔓延る悪鬼羅刹

鮮烈なる瞳玉唱歌の鈴音 虚空に出で地を掃う飛龍

終焉に慈悲の落涙 断罪救済を平等に執行す善神