特設

イルミネーション。

本来ならば夜の街を彩り、道行く人々の目を楽しませるはずの存在。

私は今日も結局使うことのなかった雨傘に鬱陶しさを感じながら、
我が愛機、パステルのもとへと向かっていた。

この時期といえば、自転車を持っていたとしてもあえて徒歩を選択したいほど、
外気は刺激的に私たちの素肌へと突き刺さる。

しかしながら、私はどうやら少しばかり寒さには強いようで、
この程度で怖気づくようなことはない。

さて、話がそれたが、学部棟を出た私が目にしたのは、
少しばかり不思議な光景だった。

駐輪場にはいつ建てられたか、テントが張られ、その周辺が賑わっている。

クリスマスイルミネーションの点灯式。

そういえば食堂でもそのような告知を見た覚えがある。

だが、私にとってそんなことは問題ではなかった。

その横、テントのせいで狭くなったスペースに無理矢理並べられた自転車達。

このとき私の脳裏には、確信にも等しい不安がよぎった。

あの中にパステルがいる。

一歩踏み出すごとに、確信は諦めに似た感情に変わり、
さらには怒りへと変化していった。

もはや私は言葉を発することさえ億劫になってしまったから俺が言わせてもらうけど、
マジふざけんなよと。

いきなりその扱いとはどういうことだよ。

前もって看板くらい立てとけや。

隙間なく詰めやがって、持ち上げないと出せないじゃないか。

いや、ちょっと段差があって持ち上げるくらいならだれでもできるじゃん？

でもこの場合、隣の自転車の高さまで持ち上げないといけないわけだろ？

まあ普通に持ち上げたけど、その後が問題だったわけだ。

そのままの体勢で横にスライドしていったわけだけど、
財布のチェーンが隣の自転車に引っ掛かった。

なんという…

もう仕方ないから本当に申し訳ないけど、隣の自転車のサドルを利用させてもらった。

持ち主は訳わかんないだろうな。

知らないうちにサドルが自転車にひかれてるんだから…

結局今回も悪いのは俺か。

仕方ないからイルミネーションだけでも見ようと思ってゆっくり晩飯食ってから学食を出たのに、
なんかつまらん話がいつまでも続いてるしよ。

お前らこそ自重しろと言いたい。

もう俺は知らん。

じゃあ僕が

お前も出てこんでいい。