恥知

他人の書いた文章を読んで恥ずかしがる奴はいない。

仮にいたとしてもそれは過去に自分の書いた文章と照らし合わせているだけだ。

つまり！私が恥ずかしいと思わなければ！

これらの文章はいつまでもどこに出しても恥ずかしくない現役の文章なのだ！

今日はそういう洗脳を施さなければ私の精神が崩壊するところだった…

恥ずかしい恥ずかしいと小一時間パソコンの前に座って固まっていた。

視線と右手だけは絶えず動いていたけれども、心は凝り固まっていた。

どうして僕の書く文章はこんなにも恥ずかしいんだッ！！

この痛みに耐えながら全てを踏み越えてゆくことが生きるということなのか…

だとしたら僕は！明日を迎えることができない！！

ごきげんよう坊や、それでは私がその想いを白いブランコに乗せ、
反動を付けて虹の彼方まで飛ばして差し上げよう。

こんにちはヒゲのおじさん、時代を先取りしたような独特のファッションだね。

この私の誘いに多くの貧民街の者達はいただきますを唱えたよ。

君も貧民街の一員ならば、それとして恥じぬよう振る舞うことをオススメしたい。

そう言われてもここは貧民街じゃないし、僕は自由に生きているよ。

自由に生きていると、その心の貧民街の中で君が思ったことは、
私にとってはどうでもいいことなんだ。

君は今日とても恥ずかしい思いをした。

君の中ではかなり重要な部分にカテゴライズされた言葉達が君を苦しめた。

それでは君は大切なもの達によって殺されなければならないのか。

そうではない、だからこそ私がここに現れたんだ。

おじさん僕は、あの夕日が沈む前に家に帰らなくてはならないんだ。

だからどうしてここに来たかなんて話を悠長に聞いてる暇はないし、
この時点までまだ何もしてくれていないということから不信感も募っている。

そうだろう、だから私は今すぐに終わらせてあげようと思っている。

呪いをかけるよ。

えッ！なんで僕がそんな目に遭わなくちゃあならないんだッ！！

君ではない、この世界と、この世界に足を踏み入れた全ての君以外の者に呪いをかけよう。

そうすることで君は確実に守られる、約束しよう。

まっておじさん、僕は今までの僕たちのやり取りが恥ずかしくなってきてしまったよ！

これはもうどうしようもないよ！！

どうしようもないことはないさ、私の呪いは強力だ。

それにとても簡単なんだ！

どうやるの？

カテゴリーを、こうするのだ。

虚言おじさんは、強かった。

行動

まだ見たことのない色のとても珍しい海が見たい。

優しい匂いのする花の花弁と同時に目覚めたい。

激しく吹き荒れゆく風の流れに乗って空を飛びたい

暗闇に光る星々の輝きを肌で受け止めたい。

真逆に天から飛来する瓦礫に飛び乗り地に落ちたい。

綺麗な世界を抜け出していつでもここへ戻りたい。

シックな服に身を包みたい。

パンの耳だけかじりたい。

欲しい物なら何でも手に入れたい。

気の向くままに旅したい。

新しい花が買いたい。

ボクは何でもしたい。

退屈な世界を飛び越えて、この世とあの世のありとあらゆることを体験したい。

したい、したい、したい。

半分

キットカットを食べてるときに目覚めたんだ。

キットカットは半分に割ってから食べます。

袋に入れたまま半分に割って、１つずつ取り出します。

キットカットの二袋目から１本取って地面に置いたんだ。

そうしたらそこに一袋目が落ちてたんだけど、その中にまだ１本残ってたの。

ああ、そうだったのか。

そのまま三袋目を１本だけ取り出して食べ、袋を地面に置いたんだ。

部屋はいつしか半分になったキットカットの入った袋で溢れた。

ボクは目覚めたの、半分にすることの喜びに。

半分になったものの美しさに。

だから半分にします。

あ、それと鏡で自分の体をよく見てみるといいよ。

よーく見てると見えてこない？

自分の体の中心にさ。

半分にするための線が、入ってるよね。

半分にします　半分にします　半分にします　半分にします　半分にします

うひっ　えひひへはっ　えひゃひゃひっ

弱草

草をさ…

ふと歩いているときに手に当たってきた草をなんとなく引きちぎってみるのだけれど。

草の細胞がなんとかそれに抵抗しようとした力が伝わってくるじゃない。

ふと空中から大きな手が現れて、私を掴んで引きちぎろうとしていくわけ。

その瞬間、私が草だったってこと。

人間が自分にトレースしようとする対象は、なにも強いものだけとは限らない。

時にはそれほど弱いものに自らの姿を重ねたくなる時もある。

でも自分が引きちぎる側だった時、決して草を弱いとは思っていない。

むしろその抵抗によって自分の手が傷つくかもしれない。

それでも私が草になっている時は、私はこの世で一番弱いんだ。

だって草だもん。

自分で歩くことすらできないのに今までそこに生きて、さっき私にちぎられた草だもん。

草は強いけど弱いよね。

どこまで大地を埋め尽くしても決して私より強くなれない草だからね。

だから私は、この草を選びたい。

大小

風船の上に星型のサイン

リボンに彩られた二つの木馬

金色のリングはグラスから溢れだし

真っ青な滴がテーブルの上に道を作った

ピエロのマントがはためく虹色のトンネルを抜け

ポップコーンのシャワーに銀の首飾りを一つ練り混ぜて

赤黄緑の紙吹雪が色々なものに反射してその数を増やすなか

何ものにも染められずただ透明にそれらすべてを包み込む何もない世界

しかし、その世界をいくら丁寧に描こうとしても私には無理だった。

その世界には、少しも大きさなんてものは無かったのだから。