命名

私は展覧会というものには少々うるさい。

ある程度規模の大きいものに自分の作品を出したこともあり、これまで数多く見てきたつもりだ。

さて、昨日も展覧会へと足を運んだわけだが、そこで驚くべきものを見つけてしまった。

その絵は私に、いや、その前を歩く全ての者に語りかけた。

山林に響き渡る少女の歌声、その音色はとても美しく、木々はさらに色を蓄える。

私にはその様子がありありと伝わってきた、絵の中に小さく描かれた少女が主人公であること、
山の中に響き渡る歌声、さらにはその舞台が山林であるということにまで及んで、
その絵はたった一言で全てをありのままに語りかけてきたのだ。

私は、このような絵を未だかつて目にしたことがなかった、その絵の題名は…

というわけでですね、面白い（？）展覧会のフォーマットを考えてきましたよ。

絵画の種類はなんでもいいんですよ。

それこそ風景画から静物画、想像画まで。
（ただし抽象画は少し条件を満たすのが難しくなるかも）

また、彫刻なども大丈夫だと思いますが、問題は題名にあります。

例えばこんな絵のタイトルはこの展覧会においてはどうなるでしょうか？

「光が届かないほど深い渓谷の中で静かに実をつける幻の大樹」

「藤の花が乱れ咲く森の優し気な香り」

もうわかったとは思いますが、とりあえず本題に入る。

他人の絵を（自分の絵を他人の立場で）見て思うのは、題名の意味がわからないということ。

きっとそれは「題名」であって「名前」ではないからではないか？
なんかややこしい文章↑
こういうどう考えてもおかしい説を持ち出すのは虚節の名物である→「虚説」を用語に登録

人というものは時におかしなことを考えるもので、自分の描いた絵を「子供」だと言ったりする。

だとすれば、題名ではなく、ちゃんとした名前をつけてやるべきではないのか。

というコンセプトの下、自分の絵に題名ではなく名前をつけるわけだ。

もうわかっただろう、上の二つの絵の名前は勿論「黒谷稔樹」と「藤森優香」である。

まさに名前。

まあ、ふとこんな展覧会があったら面白いかもしれないと思っただけですよ。

入ったら飾ってある絵の下に片っ端から人の名前が書いてあるというね。

最初はわけわからないでしょう。

だってそれは題名ではなくて名前なんですからね。

ただ、普通は作者の名前も一緒に書いてあるだろうから、とてもややこしいことは間違いない。

正直同じようなことを考えた人がいるかもしれないが、そんなに有名な話ではないよね。

ただこれ、意外と頭使うぞ。

※ちなみに冒頭の小芝居で出てきた絵の題名は「山中唱子」である。