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虚節イッター:記事を更新したいお年頃になってしまったようです
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「…あ、こんにちは。」

彼は偶然前から歩いてきた…というか、どう見ても周囲の奴らに避けられながら歩いてきた。

当たり前だ、黒いマントを羽織っている、いつの時代からやってきたんだと聞きたくもなる。

それでも、向こうから挨拶してきたんだから、一応こっちにも返す義務があるだろう…

「今あなた…挨拶、しましたよね?」

「え…まあ、だってそっちからしてきたじゃないですか。」

おかしなことを言う奴だと思った、しかし、彼は表情を一切変えずに続けた。

「良かった…早くこっちに来て下さい。」

オイオイ、新手の勧誘か?もしかして誘拐とかじゃないだろうな…

「あ、いや、いいです…僕これから用事があるんで。」

「あなた、私が本当に挨拶をしたと思ってるんですか?」

「え?」

「いいからこっちに来て下さい。」

そのセリフと同時に彼が取り出したナイフを見て、僕の「はい」と言うしかなかった…

「…お、見つかったのか!!」

「ああ、今回はなんとか奴らより先に見つけることができたよ。」

「あ、あの…すいません、なんなんですか?」

「意外と勇気があるんだな、俺が連れてこられたときはビビって何も言えなかった。」

彼らは僕を殺す気なんだろうか…そのセリフを聞いて僕自身も完全に黙ってしまった。

「手短に…と言っても少し長くなるけど、必要なことを説明する。」

確かに何も聞かされずに殺されるよりはマシか…いや、むしろ何も知らないまま死にたいくらいだ。

僕は最後の勇気を振り絞って逃走を試みた。

しかし、黒マントがすぐに僕の腕を掴んだ。

「待て!…君は今、命を狙われているんだよ。」

「何を言ってるんですか?僕は金持ちでも有名人でもないんですよ?」

彼は僕より小柄なのに、彼が掴んだ腕は振り払おうとしても少しも動かなかった。

本気で身の危険を感じた僕は我に返り、逃走を諦めた。

「話を聞いてくれ、私たちはどちらかと言えば君の味方だ。」

「どちらかと言えばって何なんですか。」

「味方というよりは、同族とでも言った方がいいかもしれない…」

この後、僕は彼の口から驚くべき事実を聞かされることになる。

だが、あのときなりふり構わずに逃げ出してしまわなくて良かったと、今では思っている。

…ここからの話は、できるだけ落ち着いて聞いてほしい。
初めに言っておくが、このナイフは君を傷つけるために持っているわけじゃない、安心してくれ。
わからないことがあれば話の途中でいくらでも質問してくれていい。

…わかりました。

早速だが、この世に魔物なんてものがいると思うか?

え…いや、それは空想のものでしょう。

でも、いるんだよ…例えば、君の体の中に。

…!?

焦るな、君の体の中の魔物は、君に力をくれる存在だ。
その証拠と言ってはなんだが、君はこれまで特に大した怪我も病気もしていないはずだ。
まあ、風邪をひいたことくらいはあったかもしれないけどね。

あ、はい、確かに風邪をひかないのが取り柄だと親に言われたことがあります。
…ていうか、その程度じゃ魔物なんて信じられませんよ。

人によっては、人間を超越した能力を与えられる者もいる。
もっとも、大抵の者は能力に気付く前に死んでしまうんだけどね。
私たちは自分たちの存在を「後継者」と呼んでいる。

…じゃあ、あなたのその力もそうだって言うんですか?

いや、私の力は私自身の力だ。
私にはもう力は残されていない。
まあ厳密に言えば少し事情が変わってくるがね。

もう?

そうだ、これが一番重要な部分なんだ、よく聞いてくれ。
魔物はいる…しかし、何匹もいるわけではない。
私の中で眠っていた魔物と、こいつの中で眠っていた魔物、そして君の中の魔物…
これらは、全て1匹の魔物のパーツなんだ。
パーツは世界各地に散らばっていて、その全てがあらゆる生物の体に隠れている。

…ひょっとして、それを集めるんですか?

そう思うだろ?残念ながら、その魔物自体は俺達には関係ないんだよな。

魔物は宿主に能力を分け与え、あるいは奪いながら眠っている。
眠っていなければならない理由もこの後すぐにわかる。
眠っているのだからそのうち目を覚ますわけだが、
目を覚ました魔物のパーツは私たちの体を去る。
その期限は、私たちの成長が止まった時だ。

年齢的にはだいたい成人の前後だな。

魔物のパーツは古い宿を捨て、別の新鮮な宿主の元へと新たに移り住むわけだ。
ただし、魔物とは霊的な存在であり、物理的に何かがなくなるわけではないので体は大丈夫だ。
このシステムは、かつてこの魔物が殺され、砕け散ったとき、完全に消し去られなかったことで、
魔物自身が考え出したのではないかと私は考えている。
素早く宿主を変えることで、効率よく復活に向けての力を蓄えているのだろうか…

でだ、ここからの話は、お前の命にかかわってくる。
俺達にとって本当の問題はその魔物なんかじゃない、その魔物を倒した側だ。
魔物が倒されたのは、今から何百年も前の話だ。
魔物が姿を保てないくらいバラバラにするほど残酷な奴らだったわけだが、
その時点では完全に「善」の存在だった。
だが、魔物がそれだけでは死なず、さらに俺たちの中に潜んでいることを知ってから…
奴らは「善」ではなく、「正義」を振りかざす集団になり下がった。
奴らは魔物のパーツが潜んでいる生物ごと魔物を消滅させようと動き出したんだ。
だが、魔物が眠った状態では奴らにも見つけることができない。
そこで、さっきの挨拶だ…

私は挨拶をしていない。
君が挨拶をされたと感じたのは、この機械のせいだ。

これは?

奴らから命懸けで奪い取ったものを私が改造した。

本当に命懸けだ、二人死んだからな…

じゃあ同じような人が他にもいたんですか?

ああ、沢山いるし、沢山いたよ。

大抵の人間は能力に気付く前に死ぬと言ったが、寿命で死ぬのではない、奴らに殺されるんだ。
当たり前だ、魔物は目覚めた時点で体を去る。
彼らに襲われる頃には、私たちはそこらの一般人と何も変わらないのだからね。

でも、あなたたちはなんで死んでないんですか?

運が良かった…私たちがここにいられるのは、すべて一人の人間のおかげだ。
彼は今のところ寿命まで殺されずに生き抜いた唯一の「後継者」だ。
彼は幼くして屈強な体を手に入れ、超能力にも目覚め、頭もよかった。
それらの力は彼が所持していたパーツに隠されていた。

彼が持っていたパーツは魔物そのもの…脳だったんだよ。

魔物も馬鹿ではない。
おそらく人間同士を戦わせるという方法を思いついたのだろう。
だが悪いことではない、そのおかげで私たちはこうして生きているのだからね。

今、脳は再び他のパーツと同じように眠りを繰り返してる。
もう彼のような存在は現れないかもしれないってことだ。

それでも私たちは死ぬわけにはいかない、先週も一人殺されたんだよ。

…待ってください、魔物が去った人間を殺しても意味はないんじゃ…?

いや、違うんだよ、最初は真実を知った者を消去するためだけに殺していたが、
やがて判明してしまったんだ…私たちの体が一般人のものと異なっていることがね。
君が挨拶をされたと感じたこの機械、これを作るために、数多くの仲間が犠牲になったことだろう。
これはもともと私たちの体質に合わせた超音波を放って、無理矢理魔物を目覚めさせる道具だ。
魔物が目覚めた瞬間に至近距離にいれば倒せると考えてのことだろう。
今では一時的に魔物を拘束する道具も実用段階に入ってきているらしい、被害者もいる。
この超音波を私が改造し、一般人には音楽に、「後継者」には挨拶に聞こえるようにした。

そっか、みんなが避けてたのは、単純に見た目が怪しかったからじゃないんですね。

そうだ、私に与えられた能力は、力よりもむしろこちらだったようだね。
しかもパーツが去った後も、こうして知能として残ってくれた。
こんな格好をしているのは、一般人を巻き添えにされたくないからだよ。
私たちの存在をある程度確認できていなければ、奴らは何をしてくるかわからない。
私のようにおとりになって戦う側と、徹底的に隠れる側に分かれているというわけだよ。

へえ、じゃあ、さっきの力の方は…

鍛えたんだよ、死ぬ気でね。
君も死にたくないのなら、今日からでも体を鍛え始めた方がいい。
奴らとの戦いは、すぐにでも始まるのだからね。

それと、お前の中の魔物はまだ目を覚ましていない。
こいつがちょうど目を覚まさない強さに調節したからな。
能力に気付けば、お前は俺たちの中で一番の戦力になるかもしれないってことだ。

奴らもいつ新たな武器を作りだしてくるかわからない。
もし私たちの存在を広範囲で検索できるような道具が作られたら…

最後に質問だ、お前も戦うか?
いやならここで俺達がパーツごと殺してやる。
これ以上、一人でも被害者を増やさないためにな…

さあ、答えを…

こうして今、僕は奴らの死体の前に立っている。

…さあ、次に狩られたい奴は、誰だ?

SUCCESSOR

久々の持ち込みシリーズですが。

設定が意外と細かいものの、物語自体がハッピーエンドに向かう気がしませんね。

これをハッピーエンドにできたら、結構な実力者ですよ。

というか、やっぱりちゃんと作ろうと思ったら、設定だけで(削ったのに)この長さかよ。

F・Aももうちょっと需要があればこういう無茶ができるんだけどね…
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