紅蓮

キャンバスに燃えさかる炎の絵を描きました。

するとどうなる？

キャンバスが燃えるのかと聞かれればそんなことはないわけだが、
確かに人の目にはそこに燃えさかる炎が映っている。

多分ね、その絵を見ることによってその人の脳内に構築された世界が燃えてるんだよ。

絵に奥行きを感じたということは、その時点でその人が奥行きを作ったに等しい。

認識は構築へとつながる力を持っている。

となれば、より確実に構築させた方が勝ちだ。

精神的な世界においては色から常識が作られることはないため、
よりその形状も重要になってくるわけだ。

つまり水面の絵を描いたのに青い山脈だと思われたら意味ないんだよ。

今回の展覧会に出した絵も、みんなの中で勝手に羽を生やされたらしい。

ただし、色の組み合わせによって条件を限定することはできる。

赤、黄、オレンジで色を塗れば嫌でも炎に見えてくるだろう。

でもね、結局は形、特に僕の絵においては。

紫と緑と白とかでも炎に見える形になってれば多分大丈夫だ。

なぜってそもそも炎が赤やらオレンジやらってのは絶対じゃないだろ？

「動力なきK村リアカー引くのも馬力」って習いました？

炎色反応で銅は緑、ナトリウムは黄みたいな感じだったと思う。

つまり、緑色の炎は実在するわけですよ。

それでも銅を燃やさないと現れないその色の炎が天高く燃え上がっているような景色は、
誰も見たことがないという条件のもとで完全な空想と定義されるほかない。

実際その絵を描いたとして、好きなだけ質問してくださいと言っても、
最後まで「銅を燃やしているんですか？」なんて質問は出そうにないね。

とまあこんなことを考えてると次の絵の構想が練り上がっていくわけなんですけどね。

緑色の炎…面白いじゃないか。

まあ見た人が色を優先させるか形を優先させるかによって変わるけどね。

緑の炎に見える人もいれば、潰れたよもぎ餅に見える人もいるかもしれない。

それでも奇麗だったら、その絵はそれでいいと思います。

あとは作者と作品の語り合いの時間ですから。

作る過程に会話ができるんなら完成してからももちろんできるよね？

ところが僕は完成してからでないと会話できないんだ。

人物画の性質かもしれないな。

ちゃんとした形になるまでは何でもないんだけど、完成すれば強いメッセージ性を持つ。

そういえば絵と会話すると言っても竜や犬は何も喋ってくれないな。

でも作る途中で意見を聞くことはできるよ。

最初、その絵の意思は僕の頭の中に存在している。

そして、完成したデザインにその意思を移し替える。

キャンバスは魂の器とでも言うべきか。

つまりね、俺の絵を軽い気持ちで所持してたりすると、何か起こるかもしれない…