檻馬

灰色に塗りつぶされた鉄格子の向こう側に一頭の馬がいる。

それは奇麗な青いたてがみを持った馬だった。

ほとんど光の届かないこの場所ではそのたてがみも黒く染まる。

それは長くたくましい脚を持った馬だった。

これほど狭い澱の中では走ることなどできはしない。

ただ一つ、その檻のちょうど真ん中。

穴があき、唯一光がこぼれている場所。

彼の跳躍力ならそこから外に出ることができる。

でも彼は、それをすることなくこの暗闇に立っていた。

彼は知っていたのだ。

その穴を抜けた先に何が待っているのかを。

それはとても白く、固くなった一人の少女。

かつて彼がその背に乗せた、ただ一人の愛する少女が眠っている。

時間が来て、檻の外から無数の視線が注がれている。

それは隣り合った二つの光だけで、２の倍数が横一列に檻を取り囲んだ。

光だけでも形は違う。

面白くもないその曲線を睨みつけるだけの日々を送っている。

でも鍵を開けないで。

鍵を開けるとこの折は簡単に崩れ落ちる。

そして、少女がバラバラになってしまう。

形だけはそのままにしておいてほしかった。

それがもうあの柔らかさを取り戻すことがなかったとしても。

あの汚らしい肉の塊は私が噛み殺してやった。

私に乗っていいのは彼女だけだ。

あの子はこの上に、今でも私を感じてくれているのだろうか。

白い女の子が独りで月の光を浴びているのだろうか。

やがてその馬は白き石になるのだろうか。