直隠

例えば数十秒くらいでリアルな木を描こうとするでしょ？

俺は目で白い紙を見ているし、頭でリアルな木を見ている。

そうすると、リアルな木が描ける。

これが本当の真実であり、絵の上手い人がひた隠しにしている上手い絵を描くコツ。

頭でリアルな木を見ることができれば、リアルな木が描ける、これだけ。

線の引き方が上手くなるとかそんなことは大して重要なことじゃない。

だって、極端な話木なんて線がどんなにブレていようがリアルに見せることはできるもん。

別に白い紙の上にリアルな木が見えてくるわけでもないよ。

だって俺、絵を描いてるときに何かをなぞろうと思ったことなんかないもん。

頭が自分の見たリアルな木をだいたい正確に描くように体に命令を出すだけのこと。

目を閉じてもリアルな木が浮かんでこないような人には、リアルな木は描けない。

頭に浮かぶようになるまでは絶対に描けない。

もっというと、最初の方は頭に浮かんでても描けない。

でも頭に浮かぶようになればいずれ描けるようになるのは間違いない。

手先の熟練なんてその後の話。

英語は日本語訳ではなく直接英語で頭に浮かぶようにならないと話せないみたいな感じ。

これ、物凄く似たような事だと思った。

だから何枚も描く前によく考えた方が良い。

まず何を描くかくらい細部までしっかり決めた方が良いし、資料を集めた方が良い。

資料をしっかり覚えて、見ずに描く。

本当に描きたいものがあるなら、素材になる写真や絵なんて自分から進んで集められる。

俺は今悪魔を描いているから、普段気付いたら小一時間悪魔について調べてるなんてザラ。

題材に対する礼儀とかではなく、それが上手く描くコツ以外の何物でもないから。

そんなこともできないようでは絶対に上手くならない。

よりリアルな木を見られるようになるためには本物の木を見に行けばいいということ。

だから俺にとっては実際絵を描いている時と資料を調べている時は同じような感覚。

正直その二つの作業にあまり違いは無い。

ようは頭で見るという行為に対するインプットかアウトプットかの違い。

頭で見ることが絵を描くことの全てだ。

というか、絵を描くとは（実際にはそこに存在しない物を）頭で見るということだ。

頭で見ろ。