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何がいけなかったのか、そんなことはもうわかっていた。
モビリンは死亡、ハイチは行方不明、アリシュナの討伐にすら失敗した。
そして今、アリシュナの力は消滅するどころかかつての何倍にも増大している。
戦いというものは、対等な力では成り立たないのだ。
どちらか一方が圧倒的な戦力差でもう一方を徹底的に殲滅しなければ、
どのような形であろうと戦いに終わりが見えることはない。
「ここにハイチがいるのね…」
「ああ、間違いない。」
再会はモビリンの永眠期間が半年を迎えようとしていた頃、実にあっけないものだった。
モビリンを蘇らせること自体は難しくはなかった、しかし、禁忌である。
このことをアカデミーに悟られぬよう、結界を構築するのに半年を要したのだ。
ルイの目的はアリシュナの討伐である。しかし、今の彼ではアリシュナに到底太刀打ちできない。
アリシュナが強大な力を保有したことをアカデミーから知らされた彼は、酷く絶望した。
ついにこの一件は自分一人の力ではどうすることもできなくなったのだ。
しかし、必ずアリシュナを殺し、自由を手に入れなければならない。そのための人生だった。
ルイはモビリンから霊界への入口を聞き、ハイチのもとへと向かう。
以前の戦いを経験した者を一人でも多く味方につけておきたかった。
「…ハイチ、探したわよ。酷く老けたわね。」
「悪いが、これが俺の本当の姿だ。それに何の用だ?俺はもうお前に用はない。」
「記憶が戻ってよかったわね。でも、あたしと過ごした記憶も残ってるでしょ?」
「ああ、お前の顔を見るだけで吐き気がしそうだぜ。」
「そんなこと言わずにさ…もう一度力を貸してくれないかしら?」
「…だがな、俺は今こうして家族で仲良く暮らしている。テミストは失ったが…」
「本当なら、霊界なんかで暮らさなくてもよかったんじゃない?」
「それは…」
「それにテミストを失うことだってなかった…すべてはアリシュナのせいよ。」
「だが、せっかく手に入れたこの幸せを再び手放せと言うのか!?」
「そんなこと言ってない、その幸せを永遠のものにすればいいのよ。」
「そのためにアリシュナを殺せと?だが今の俺にそんな力は…」
「あたしがまた力をあげるわ。モビリンだっている。」
「…そうか、お前が実体としてここにいるのもモビリンのおかげということだな。」
「ええ、モビリンは今でもあたしの大切な仲間よ。…そして、貴方もね。」
「フン…ああ、いいだろう。その代り、今度は記憶を消したりはするなよ?」
ハイチは己の意思で仲間に加わった。いくらルイと言えども男の友情を感じた瞬間だった。
使い魔としての能力を取り戻したハイチには「亡き人の軍勢」がついている。
これだけでも、かなり心強い味方を手に入れることができたと言っていいだろう。
モビリンも順調に回復し、3人が具体的にアリシュナの討伐を画策し始めた矢先、
一人の男が彼らのもとを訪れた。
「すみませーん!」
「あら、なんでここがわかったのかしら…」
「とりあえず只者じゃないということには違いないだろうな。」
「待て、あの頭から生えてる羽はあのときの…!?」
「モビリン、知ってるのか?」
「いや、あのとき城で殺した化け物に似てるんだ。」
「僕はリッヒ=レイドロアって言います。モビリン、覚えてる?」
「やっぱり俺のことを知っている…ルイ、すぐには中に入れない方がいい。」
「そうね…何の御用かしら?」
「僕を皆さんの仲間に入れてほしいんです。」
「ほう、なかなか面白いことを言う奴だな。」
「はいそうですか、というわけにはいかないわね。事情を話しなさい。」
リッヒは自らが「ハイブリッドブラッド計画」の被害者であり、コウモリと身体を共有していたこと、
普段は彼に主導権はなく、アリシュナの言いなりだったことなどを中心に、
3人が興味を引きそうな話を語った。
「…なるほど、お前が俺の命の恩人というわけか。」
「でもアンタ、あたしたちの仲間になったからって何もできないようじゃ…」
「それはご心配なく。僕はモビリンが知らない情報を知っているんです。」
「俺が知らない情報?」
「エルフの隠れ里。」
「なに!?お前…何者だ?」
「今はこんな姿をしているけど、もとはエルフだったんだ。初めに言っておくべきだったかな?」
「モビリンやアリシュナ達ですら見つけることが出来なかったエルフの隠れ里…」
「そう簡単に見つかるものじゃない。敵に見つかったらエルフは全滅ですからね。」
「…で、それがどう役に立つって言うのかしら?」
「武器があります。」
「武器?それだけなの?…武器だけあってもねえ。」
「もちろんただの武器ではありません、使い方次第では…この世の悪魔はすべて消え去る。」
「なんでそんなものを今まで大事に持ってたのよ?」
「それは…」
「それは?」
「…使える者がいなかったからです。」
こうしてリッヒは4人目の仲間となった。アリシュナは低級神をその体内に取り込み、
低級魔神バッフェンドートーを殺した。そして、神の力をさらに強大なものとするため、
同じく低級神の多く存在する日本へと飛び去ったのだ。
くしくもルイとアリシュナの目的地は重なり、再び決戦の火蓋が切って落とされたのである。
「フン…低級神の力はこの程度か、これでは足りない。」
「そう焦るな、この国の神は八百万…食い放題だ。」
「では、あとどれほど食らえばいいというのだ?」
「そうだな、あと百ほど食えば、中級ってところかな?」
「面倒臭い…とんだ茶番だな!!」
ルイとアリシュナ。魔法使いと怪物の戦いは、神々を巻き込んだ黒き歴史を生み出す。
その序章、舞台は神の国。果して勝利の女神はどちらに微笑むのか。
そして、それを嘲笑うかのように、もう一人。彼女もまた、神だった。
「アリシュナ、食うか食われるか…馬鹿みたい!私が殺してやる!!」
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