脳内

今回はサトラレのお話。

数年前に映画やドラマなどで有名になったサトラレ。

強すぎる脳波が周囲に伝播することで思考が他人に伝わってしまうという症状だったような。

このドラマを見ていた頃は対して疑問も浮かんでこなかったわけだが、
最近このシステムに気になる部分がいろいろとあることに気づいた。

大きなところからいくとシステムそのものに関することになるわけだが、
サトラレは思考が相手に伝わるという。

しかし、人間の思考は言葉として表現できるものだけではない。

例えば、自分の好きな曲を脳内再生したとしよう。

鼻歌で再生すれば当然その鼻歌が周囲に聞こえるというのは理解できる。

だが、原曲に限りなく忠実に想像したものはどうなる？

ましてそれが一切歌のない器楽だった場合、その音が聞こえるのだろうか？

さらに、絵をはじめとする映像を想像した場合は周囲にもその映像が見えるのか？

少し違う視点から考えると、サトラレは例外なく天才だという。

それも能力を活かして多方面で活躍しているとのこと。

そういった思考に周囲の一般人がついて行けるだろうか？

具体的に言うと、天才の脳の処理速度に一般人の脳はついて行けるのか？

数字を映像や感覚で認識するような考え方が一般人に可能なのか？

速読にしてもそうだが、否応なしにわずかな時間に多量の情報が頭の中に流れ込んでくるわけだ。

周囲の人間の脳が処理速度の限界を超えてバタバタと倒れていくのではないか？
（というのは言い過ぎかもしれないが）

もしそんなことになれば、サトラレなど世界に存在しないことになる。

言い換えると、世に出てすぐに抹殺されるだろう。

よって、現実の世界にサトラレなんてものは存在しないという結論が導き出される。

例えばもし私がサトラレなら、陰陽座の知名度は格段に上昇しているはず。

ということではなく、存在したとしても一般人とは絶対に触れ合うことができず、
地下の研究所にでも隔離されている。

もしくは生物兵器として戦争に用いられたりしている。

つまり、こうして一般的な人間として生活している以上、自由に想像できるということだ。

俺がサトラレなら、陰陽座の知名度が上がる前に友人が一人もいなくなってるからね。

でもみんな少しくらいはそういう要素を持ってるだろ。

誰だってある言葉に対するいろんなパターンの反応を頭の中で考えて、
相手が喜ぶかとか自分に利益が出るかとかを考慮した上で口に出すよな。

だからどんな想像をしようが、口に出したこと＝思考した結果でいいんだよ。

猫が箱から出てこないうちは、とりあえず死んだことにはならないんだ。

その代わりとも言えるけど、一度口に出した言葉の責任は自分でとるしかないんだけどね。

しかし、こういう問題は考え出すときりがないというか、どこまでも細かく考えられるよな。

例えば想像した曲の歌手が女性だったら男でも女の声になるのかとかさ。

…まあ、そういう情報量が多すぎるのは伝わらないってことにすると一発で片付くんだけどね。
（しかし、それだとサトラレが実際に存在してもおかしくなくなるという罠）