虚節イッター:記事を更新したいお年頃になってしまったようです
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おや、どうしたんだいお客さん。
今日はもう店じまいだ、さっさと帰んな。
…なに、いつものやつが聞きたいって?
しかたねえな、わかった、聞き終わったら帰ってくれよな。
店長のちょっといい話 「少女の贈り物」
この街に昨日引っ越してきたばかりの男がいた。
まだ右も左もわからないような街で、早速男は迷っちまった。
買い物を頼まれて張り切っていただけに男は焦っていた。
「まずい…またかみさんに怒られる」っつってな。
まあ、そんなわけで街中を丸一日歩き回った男だったが、
どこをどう間違えたか、同じ道に出るわますます家から離れるわでもう散々だ。
このままじゃあ今日はもう家にたどり着けないかもしれねえ。
いよいよ野宿かと男は腹をくくった。
ちょうどあそこに公園がある、寝場所には困らないだろう。
そう思ってとりあえずその公園に足を踏み入れたわけだが、こんな時間だ、
どこもかしこも閑散としてやがる。
誰もいるはずはなかった。
さすがに野宿するところを他人に見られるのは癪に障る。
ひとまず安心して辺りを物色し始めたんだが、ふとおかしなものが視界に入った。
5、6才ほどの少女が一人でベンチに座っている。
男は、おかしい、さっきはこんな奴いなかったはずだが…と思ったものの、
放っておくわけにもいかず、仕方なくその少女に声をかけた。
どうやらその少女は事故で両親を亡くしてしまったらしい。
それもかなり前の話だそうだ。
ところが、今までどうしていたのかと聞いても何も答えない。
困り果てているところに少女がこう言った。
「おじさん、今日だけ私のお父さんになってくれない?」ってな。
男は喜んで引き受けた。
それもそのはず、この夫婦にはまだ子供がいなかった。
正確には、この男の妻は子宮にちょっとした問題があって、
腹の中で子供が上手く育ってくれなかったんだそうだ。
ところが父親になるといっても何をしてやればいいかわからない。
どこかに出かけるといっても日も暮れかけ、しかもどこに何があるのかもわからない。
すると少女は、今日一日だけ、ここで一緒に寝てくれるだけでいいと言った。
それくらいならお安い御用だ。
そもそも野宿するつもりだったし、帰ってから叱られる覚悟もしていた。
明日になったらこの子を連れて交番にでも行って、ついでに自宅の場所も教えてもらえばいい。
もっとも、交番までたどり着けるかが不安だったわけだが。
そんなわけで、とりあえず男は少女にいろいろな話をしてやった。
妻と出会ったときのこと、結婚したときのこと、旅行に出かけたときのこと…
ほとんどは妻と出会ってからの話だった。
少女はそれを嬉しそうに聞いていた。
気が付くと辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
少女の着ている服は温かそうだったが、それでも少女は少し寒そうにしていた。
男はそろそろ寝るかと自分の着ていたコートを少女にかぶせてやった。
すると少女は一緒にコートに入ったほうが温かいと、男にもコートをかぶせた。
そのままその夜は二人で眠った。
少女の体は少しだけ温かかった。
次の日の朝、男が目を覚ますと、少女の姿はなくなっていた。
ただ、コートのポケットには紙切れが一枚入っていて、「ありがとう」と書いてあった。
急に妻が恋しくなった男はすぐ自宅に帰った。
なぜか迷うことなく家にたどり着くことができた。
案の定、カンカンになって怒ってくる妻を、男は強く抱きしめてやった。
そのとき男は無意識のうちに涙を流していたそうだ。
それから十月十日ほど経ったある日、二人には子供ができた。
今ではすっかり可愛らしく育って、家族三人で仲良く暮らしているそうだ。
ちなみにその子供が初めて覚えた言葉は、「ありがとう」だったんだと。
…ほら、話は終わりだ、さっさと帰ってくれ。
おう、また来てくれよ。
さて、あんたもそろそろ帰ってもらえるかな?
ちなみに俺は、途中でオチがわかっちまうような話も嫌いじゃあない、かな。
今日はもう店じまいだ、さっさと帰んな。
…なに、いつものやつが聞きたいって?
しかたねえな、わかった、聞き終わったら帰ってくれよな。
店長のちょっといい話 「少女の贈り物」
この街に昨日引っ越してきたばかりの男がいた。
まだ右も左もわからないような街で、早速男は迷っちまった。
買い物を頼まれて張り切っていただけに男は焦っていた。
「まずい…またかみさんに怒られる」っつってな。
まあ、そんなわけで街中を丸一日歩き回った男だったが、
どこをどう間違えたか、同じ道に出るわますます家から離れるわでもう散々だ。
このままじゃあ今日はもう家にたどり着けないかもしれねえ。
いよいよ野宿かと男は腹をくくった。
ちょうどあそこに公園がある、寝場所には困らないだろう。
そう思ってとりあえずその公園に足を踏み入れたわけだが、こんな時間だ、
どこもかしこも閑散としてやがる。
誰もいるはずはなかった。
さすがに野宿するところを他人に見られるのは癪に障る。
ひとまず安心して辺りを物色し始めたんだが、ふとおかしなものが視界に入った。
5、6才ほどの少女が一人でベンチに座っている。
男は、おかしい、さっきはこんな奴いなかったはずだが…と思ったものの、
放っておくわけにもいかず、仕方なくその少女に声をかけた。
どうやらその少女は事故で両親を亡くしてしまったらしい。
それもかなり前の話だそうだ。
ところが、今までどうしていたのかと聞いても何も答えない。
困り果てているところに少女がこう言った。
「おじさん、今日だけ私のお父さんになってくれない?」ってな。
男は喜んで引き受けた。
それもそのはず、この夫婦にはまだ子供がいなかった。
正確には、この男の妻は子宮にちょっとした問題があって、
腹の中で子供が上手く育ってくれなかったんだそうだ。
ところが父親になるといっても何をしてやればいいかわからない。
どこかに出かけるといっても日も暮れかけ、しかもどこに何があるのかもわからない。
すると少女は、今日一日だけ、ここで一緒に寝てくれるだけでいいと言った。
それくらいならお安い御用だ。
そもそも野宿するつもりだったし、帰ってから叱られる覚悟もしていた。
明日になったらこの子を連れて交番にでも行って、ついでに自宅の場所も教えてもらえばいい。
もっとも、交番までたどり着けるかが不安だったわけだが。
そんなわけで、とりあえず男は少女にいろいろな話をしてやった。
妻と出会ったときのこと、結婚したときのこと、旅行に出かけたときのこと…
ほとんどは妻と出会ってからの話だった。
少女はそれを嬉しそうに聞いていた。
気が付くと辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
少女の着ている服は温かそうだったが、それでも少女は少し寒そうにしていた。
男はそろそろ寝るかと自分の着ていたコートを少女にかぶせてやった。
すると少女は一緒にコートに入ったほうが温かいと、男にもコートをかぶせた。
そのままその夜は二人で眠った。
少女の体は少しだけ温かかった。
次の日の朝、男が目を覚ますと、少女の姿はなくなっていた。
ただ、コートのポケットには紙切れが一枚入っていて、「ありがとう」と書いてあった。
急に妻が恋しくなった男はすぐ自宅に帰った。
なぜか迷うことなく家にたどり着くことができた。
案の定、カンカンになって怒ってくる妻を、男は強く抱きしめてやった。
そのとき男は無意識のうちに涙を流していたそうだ。
それから十月十日ほど経ったある日、二人には子供ができた。
今ではすっかり可愛らしく育って、家族三人で仲良く暮らしているそうだ。
ちなみにその子供が初めて覚えた言葉は、「ありがとう」だったんだと。
…ほら、話は終わりだ、さっさと帰ってくれ。
おう、また来てくれよ。
さて、あんたもそろそろ帰ってもらえるかな?
ちなみに俺は、途中でオチがわかっちまうような話も嫌いじゃあない、かな。
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