捨閉

日常へのアンチテーゼとして用いられる幻想的主人公は過去を持たず孤独。

つい先程からの存在に相応しい不敵な表情を強制され理想の時空間に配置される狂気。

何処かからやってきて何処かへと向かっていく一方通行の物語。

空の上から手を伸ばして駒を掴むように拾い上げたことを歓迎する偶像。

外界からの介入無しにはその一挙手一投足すらも為し得ない存在への信仰。

創造主の代弁者としての役割を放棄した者達が招いた非生産的新時代の遺物。

握り潰した物が異なる存在を形成した架空の芸術を祀り上げる本能的な堕落。

朽ちた世界の中で夢を持ち謳われる通りの努力を賛美される者は驚くほどに少数。

望まれながらにして望まれぬ独自の思想構築と繰り返される定石への非難。

同じ使命を持つ新たな弾の装填を終え次なる英雄が産声を上げるまでの猶予は刹那。