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私がまだ幼かった頃、爺ちゃんとよく山に出かけました。
畑の肥料になる落ち葉を集めたり、木の実を取ったり、ただハイキングに行くだけのときもありました。
ある日、いつものように落ち葉を拾っていると、
森林の奥を何か白いものが走っているのが見えました。
私は爺ちゃんに「あれなに?」と聞きました。
爺ちゃんは暫く辺りを見回していましたが、何も見えない様子でした。
でもそのときはまだ私にはそれが見えていました。
それを目で追う私を見て、いきなり爺ちゃんが「そいつは白い色をしたやつか?」と聞きました。
私がうなずくと、爺ちゃんは村の守り神について教えてくれました。
ヤマヌシ(山主)といって、白いイノシシの姿をしているのだそうです。
この地に昔から住んでいる人々や生き物を護ってくれるやさしい神様なのですが、
余所から入ってきた敵には容赦しないとのこと。
また、ヤマヌシに触れることは出来ませんが、ヤマヌシの方からこちらへ走ってくることがあり、
自分の身体をすり抜けられるとその年は良い事があると言われているそうです。
そしてその姿も歳をとるほど見えなくなっていくと教えられました。
当時の私は生きているイノシシを見たことがなかったので、
あれがイノシシという生き物なんだと思ったのを覚えています。
数年が経ち、私もヤマヌシに関していろいろなところで話を聞きました。
どうやら大人なら村の誰もが知っている存在のようでした。
実際にヤマヌシにすり抜けられたと言う人もいて、彼はその年に持病が完全に治ったそうです。
それから暫くしてまた爺ちゃんと山へ行ったとき、再びヤマヌシを見ました。
不思議とその頃は怖いとは思わず、あのときのイノシシに再び出会えて嬉しいと思いました。
そのときのヤマヌシは、よく見るとうっすらと透けていました。
以前見たときは真っ白な身体で少なくとも透けてはいませんでした。
このとき爺ちゃんの言っていた「歳をとるほど見えなくなっていく」という言葉を思い出しました。
すると突然、ヤマヌシがこちらへ物凄い速さで走ってきました。
まだ子供だった私は当然動くことが出来ず、その場に倒れそうになりましたが、
ヤマヌシはそのまま私の身体をすり抜けてどこかへ走り去ってしまいました。
すぐに爺ちゃんのところへ走って行き、その話をすると、爺ちゃんは大喜びでした。
「そりゃあええことじゃ、今日はお祝いせんとな。」
その日はヤマヌシに通り抜けられた日にするというお祝いをしてもらいました。
私はその日から苦手だった勉強がなぜか好きになり、村で一番勉強が出来るようになりました。
そのお陰もあり、都会へ出て学校に進学させてもらえることになりました。
小学校の高学年からの編入でしたが、勉強についていけないといったこともなく、
そのまま中学、高校、大学とトップクラスの成績で進学することが出来ました。
ある日、大学で出来た友人が私の村へ行ってみたいと言いました。
よく話す友人でヤマヌシの話もしていたため、興味を持ったそうです。
私も大学に入ってからは実家へ帰ることも少なくなっており、
丁度いい機会だと思って友人と一緒に里帰りすることにしました。
当日は私の車に友人を乗せ、二人で途中の店に寄ったりしながら、1日かけて帰りました。
村に着いた頃にはすっかり日も暮れて、二人ともかなり疲れていました。
一刻も早く家に上がって横になりたいと思っていた私でしたが、
ここで友人が「山の方へ行ってみないか?」と言ってきました。
私もこのまま寝るよりは山で星でも見てからの方がよく眠れるかと思い、賛成しました。
夏だったため夜でも辺りは蒸し暑く、車から降りると早速汗が噴き出しました。
さっきまで疲れていた友人は、カメラを取り出し、なぜか疲れなど忘れたかのように歩き始めました。
しばらく友人の後について歩いていると、やがて見知らぬ祠の前に出ました。
私は直感的にヤマヌシを祀っている祠だと思いました。
友人は祠を写真に収め、なおも興味深そうに山の奥へと進んでいきます。
私も友人を置いていくわけにも行かず、そろそろ帰りたいところを我慢してついていきました。
そのとき、私たちは、「ヤマヌシのようなもの」に出会いました。
正確に言うと、ほとんど透けていてよく見えませんでしたが、明らかに何かがいるとわかりました。
しかし私は何度も見ているので、すぐにそれがヤマヌシだと理解しました。
本物を見て驚いたのか、友人はいきなり怖がりだし、私の後ろに隠れました。
私はむしろまた会うことができたのが嬉しくて、つい笑みがこぼれてしまいました。
「大丈夫だよ、幽霊とかとはちょっと違うから。」
私が友人にそう言った次の瞬間、ヤマヌシが物凄い速さでこちらに走ってきました。
私は動じませんでしたが、友人は私にしがみついてきました。
あのときのように、ヤマヌシは私の身体をすり抜け、どこかへ走り去っていきました。
「ああああああああああああああああああ!!」
友人が叫び声を上げ、その場に崩れました。
何事かと思い友人を見ると、両足の肉が縦に裂け、カメラは粉々に砕けていました。
私は、はっと爺ちゃんの話を思い出しました。
ヤマヌシは余所から入ってきた敵には容赦しない…
私はとんでもないことをしてしまったことに気づきました。
完全な余所者である友人を村に入れるどころか、
山にまで連れて行き祠を写真に撮らせるなんて。
その日は村の医者まで友人を連れて行き、なんとか友人を助けることが出来ました。
心配する家族にその日起こったことを話すと、こっぴどく叱られてしまいました。
これは数日後に気づいたんですが、私の背中に謎の×印のあざが出来ていました。
以前はなかったのできっとヤマヌシに付けられたのだろうと思います。
これが何を意味しているのか、私にはまだわかっていません…
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