弱草

草をさ…

ふと歩いているときに手に当たってきた草をなんとなく引きちぎってみるのだけれど。

草の細胞がなんとかそれに抵抗しようとした力が伝わってくるじゃない。

ふと空中から大きな手が現れて、私を掴んで引きちぎろうとしていくわけ。

その瞬間、私が草だったってこと。

人間が自分にトレースしようとする対象は、なにも強いものだけとは限らない。

時にはそれほど弱いものに自らの姿を重ねたくなる時もある。

でも自分が引きちぎる側だった時、決して草を弱いとは思っていない。

むしろその抵抗によって自分の手が傷つくかもしれない。

それでも私が草になっている時は、私はこの世で一番弱いんだ。

だって草だもん。

自分で歩くことすらできないのに今までそこに生きて、さっき私にちぎられた草だもん。

草は強いけど弱いよね。

どこまで大地を埋め尽くしても決して私より強くなれない草だからね。

だから私は、この草を選びたい。