檻中

お前より苦労している人はいくらだっているんだぞ！

あたりまえだ、俺が世界で一番苦労していてたまるか。

俺は今とてもとてもとても幸せなんだ。

だから好きなだけ物が食べられるし気分次第で残すことだってできる。

この自由を一度味わってしまったものが簡単に手放せると思うの？

こうやって今お前をさしているこの指を軽くひねれば炎だって出せちゃうしねぇ。

ホント、良い世界だよねぇ！

お前は俺の親でもないくせにそうやって意味不明なことをいってくるから消しちゃうね。

お前が親のはずはないんだよねぇ。

親はもう両方やっちゃったからねぇ！

銃声が鳴って、窓ガラスが飛び散ったら、誰がこの部屋に突撃してくるともしれない。

でもそうなったら俺はそいつを殺すことができるし気分次第で殺さなくてもいい。

でも入ってきた奴はこっちを殺すしかない。

そいつは気付かないうちに檻の中に飛び込んだんだ。

だが私はこの時自分自身が既に檻に入れられていることに気付いていなかった。

まさにこの状況そのものだったのだ。

最初の言葉に反論した自分は、まさにガラスを突き破って入ってきた彼だった。

相手は私を叱ることもできるし気分次第で叱らないこともできる。

こうやって勝手に話し始めた自分を野放しにしておいて、
いいところでふらっと芽を摘みにやってくるのかもしれない。

ニヤニヤとその時を待つ二つの目が遠くから気付かれないようにこっちを見ている。

私は檻の外から見られているのだ。

それすらも楽しめる自分でありたかったのに、気付いてしまったらもうそうはいかない。

気付けばおかしなものを見て笑っている人達が、そこかしこに溢れていた。

虚言の季節とは檻だったのだね。

じゃあもう、俺はみんなをやりに行くしかないじゃないか…

君も見ていたのか、じゃあ僕より苦労してもらわなくちゃね。

僕がより幸せであるためにねぇ！

今日からたまに押し入れの戸が少しだけ空いてないかチェックしておけば助かる。