破棄

絵描きに大切なのは描くことよりも消すことだと思うのは僕だけでしょうか。

一言で表すと「満足しない」ということなんだと思いますが、
例えば自分が何か新たな絵を描き始めることにしたと仮定してみてください。

なにもない状態から描き始めて、下書きが４割くらいのクオリティで出来たとします。

しかしそこから筆を進める前に完成後に２割くらい良く見えそうな構図が浮かんだとしましょう。

あなたは今描いているその絵を消せますか？

構図そのものが違うのであれば少なくともメインの物体は消さなければなりませんが、
あとは気持ちの問題なんですよね。

僕は迷うことなく消せます。

というか、今まで常にそうやってきましたから。

一通り細部まで描いた絵をクシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てたことなんて数えきれません。

そうしないと満足のいくものが出来てこないのは、僕に才能がないからでしょう。

でもこれをやってこそ今の作品があるのだということを覚えておいてほしいのです。

とりあえず活かせる部分は活かすというのは、類義語ではないかもしれませんが、
「安物買いの銭失い」のようなことではないかと思います。

自分の絵が可愛い、もしくはこのまま続けた方が時間的に早く終わると思えても、
最終的に出来上がるものが満足できるものでなければ作業全てが水の泡ですよ。

それだったら気付いた時点で破棄しておいた方が損は少ないということになります。

仕事で納期を守って絵を描いているわけでもないなら、
気に入らない絵は全部捨ててみるというのも悪くないですよ。

ただすぐ捨てるとさっき思いついた構図まで消えてなくなることがあるので注意が必要です。

人間は何もない空間でも周囲の情報からそこにあるべきものを推測することができますよね。

それと同じことが絵にも言えて、自分が今描いているパーツからその先が見えてくるわけです。

それに基づいてもっと良い構図が浮かんだという場合は、
すぐにそれを捨ててしまうと土台がなくなってしまうので全て忘れてしまう可能性があります。

まあとりあえず横に置いておいて、別の紙にでも描き始めるべきでしょうね。

僕は紙が勿体ないのでその場で全消ししますけどね。

消しすぎてもはや消しゴムが勿体ないレベル。

ということで、消せる勇気を持ちましょうというお話でした。